【2008.08.08配信】
あるIT会社の部長が訪ねてきた。当社のBREALOGICをベースにSaaSで展開したいが協力いただけないかとの相談で来社したわけである。対象は中小企業であるということで話を伺った。
この企業は日本メーカーの某SFAを積極的に販売していることで私も名前を知っていたので、なぜSaaSで新たに展開をするのかを質問した。
すると彼は我が社も某SFAを使っているのだが、もともと営業マン性悪説から導入が始まって今、大変な事態になっているということであった。
それはSFAが営業マンのサボリ管理に使われ、その結果多くの営業マンがウツ状態になっているというのである。
性悪説とは、2点ある。一つは営業マンの行動がブラックボックス化して見えない。顧客のところへ行っていると報告があっても実際にはパチンコをやっているかもしれない。
二つは月初めの発表数字と月末の結果数字とが違うが、そこがなぜか分からない。まったくもって営業はだらしがないということから営業性悪説が起こっている。
性悪説をもって管理されたら営業マンはストレスになる。
IT会社の部長は、「恥ずかしい話だが社内のモチベーションは下がり、病人も出る始末で、実際このパッケージを販売した顧客先でも同じ現象が起きている」と語った。
過去に性悪説をもってSFAを導入したある大企業の経営企画部長は、私との会話でこう語った。
当社はメーカーであるので、どうしても製造部出身役員の発言が強く、営業を性悪説で捉えがちで結果としてSFAも管理する思考が強く設計された。しかし営業マンを性悪説で管理しようとする考えは間違いであった。次のSFAは営業マンの話を良く聞いて彼等の持っているナレッジを取り入れた本当に支援できるものにしたい」
この話と企業文化性悪説とは似ている。
なにごとも悪と規定すれば、悪を排除しようと掛かる。しかし営業マンが日中スターバックスで次のアポイント時間を調整することは悪なのか。
製造部感覚では、作業中にスターバックスにいることはありえない話だが、顧客を対象にしている営業マンは十分にあり得る。
一日に二度も三度も同じ顧客企業へ訪問することは効率の観点ではムダに見えるが、顧客に合わせなければいけない営業活動では、ムダとは言い切れない。こうした努力が顧客を以って信頼を勝ち取るアクションにだって置き換わるからだ。
あるOA機器メーカーの営業マンが、セールス中に顧客との会話メモを取ることに専念しているのはSFAの日報に報告書を記載するためだが、彼はメモと書くのに集中し熱意をぶつけて顧客に当社の製品がいかに素晴らしいのかを説く事を忘れてしまっている。上司に怒られないようにするために、一日に十軒以上も訪問する訪問日報を帰社してからは思い出せないといって、商談の場がメモ作成の場であることは入れ違えも良いところだ。
熱意を持って商品説明をした結果、詳しいメモを作成できなくて、その結果上司から叱責されるのであれば、営業マンのモチベーションは下がるに決まっているではないか。
先のIT会社社長は自社と同じ現象がSFAを納入した顧客先に起こっていることで、これでは現状の管理型SFAは永くは続かないことも現実問題として危機感があるので思い切ってSaaS形式で営業マンの支援が有効にできる仕組みを作りたいと、当社のドアをノックしたわけである。
こうしたSFAを導入して誰が幸せになるのだろう。
企業とて売上げが伸びるものではない。営業マンは精神的な負担を背負う。管理型上司はうちの営業はだらしがないといって溜飲を下げるだろうが、それが営業部上司の本業か。
ぼつぼつSFAを営業マンのサボリ管理に使うやり方は終わりを遂げるだろう。
売る側がこれだけ商品のSFAに首をかしげているのだから。
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