【2008.10.05配信】
顧客を持つ企業(B2C企業)はどこでも顧客の分布が正三角形から二等辺三角形に変化している。つまりは上位がせり出し、中位が狭くなり、下位の裾野が大幅に小さくなるという形である。
よく考えると、何のことはない。高度成長時代以前のむかしの構造に戻ったのである。
例えばクリーニング業はむかしは金持ちを相手にした商売であった。金持ちの家には女中さんという手伝いの女性がいて、外交と名付けた営業担当者が、女中さんを訪ねた。
すると女中さんはタンスの中から旦那さんのよそ行きの服を持ってきて営業担当者に見せる。
営業担当者(小さなクリーニング店では店主)は、この服は洗ったばかりだがしみが付いているから落としておこう。この服は折り目が消えているからアイロンを掛けたほうが良いなどと言ってクリーニング品を預かっていった。
完璧に金持ちのビジネスだったわけである。当時スーツはサラリーマンの給料換算では何ヶ月分というほど高価であった。しかも金持ちはイギリスのドーメルとか、カシミア生地はCRMBIEなどと有名ブランド生地を使って有名な仕立屋で作っていたからスーツ一着が今のお金で100万円を越えるほど高価であった。服が高価ならクリーニング代も高価。
したがってむかしのクリーニング業はとても儲かる商売であった。
この時代の社会構造を三角形で表すと二等辺三角形となったわけである。クリーニング業は、上位を対象にしたビジネスをしてとてつもない利益を上げていたのである。
やがて高度経済成長時代になると家事から解放された女性の社会寝室が始まり、いまの中国のように年々給料が増えていった。それに対応するようにクリーニング店は取次店を作って料金を下げて大量に集荷し、集中工場で大量に処理するようになった。ここで古いクリーニング店と新しいクリーニング店との入れ替えが始まったわけである。新しい時代についていったクリーニング店は規模の拡大をはたし、むかしのやり方にしがみついたクリーニング店は個人経営のまま取次店の安売り料金に押され、負けていった。
そのあとさらに低料金競争がはじまり、これまでクリーニングにださない顧客層を掴んでいった。
市場は三層になったわけである。
つまり顧客分布が正三角形に膨らんだのである。
ところがいまは、少子高齢化時代でその上格差時代になった。すると安いからクリーニングに出していた低位層がコインランドリーや家庭洗濯に回ってしまった。さらに中位層が低料金店に回ってしまった。
そこで中位部分がやせ細ってきた。
しかし一方では金持ちが増えてきている。時代に乗ったビジネスを行った人たちが富を積んだわけである。そこで上位の三角頂点にいる層が突出してきた。したがってまたむかしの構造であった二等辺三角形に戻った次第である。
クリーニング業界に喩えて言っているがどの業界にも通用する話である。
企業は売上げを増やさなければならない存在なわけで、ここで行うことは3つある。
一つは新規顧客を開発していくこと。
二つは既存顧客を育成していくこと。
三つは富裕層戦略を実現すること。
新規顧客を取るには、マスマーケティングが必要になる。ここでとった顧客はほとんどが一回限りの顧客になる。これまではそれでも是としていた。またマスマーケティングを打てばよいからである。しかし、マスマーケティングは価格を下げるリスクが生じる。要は価格の安さで顧客を集めようとするからである。これでは二つめと三つめが実行できない。
そこで企業は顧客訴求を価格競争にしない競争、それは品質競争によるマスマーケティングの展開に及ぶ。
次に、せっかく作った新客も放置していれば75%~80%は定着しない.ここでもパレートの法則は働く。そこで顧客ケアが必要になる。顧客ケアの成果は先号のメルマガで記した通りである。
それだけではダメで富裕層を対象にしたビジネスが企業には必要なのだ。そこで富裕層を相手にしたビジネスがここで生まれる。富裕層という言葉は適切ではない。資産をたっぷり持っていても消費をしない人がたくさんいる。お金を使わないから富裕層になったということでもあるからだ。金融機関以外はお金を使わない富裕層には興味はないはずだ。
富裕層はどこにいるか。答えは一つ。エリアにいる。栄らとは地べたのエリアと、自社のデータベースというエリアに存在するのだ。
富裕層は顧客ケアで育成する。情と理のアクションで顧客の状態を確認できるようにして関係を深めていく。
これらを仕組み化することで時代に適合する顧客戦略は実現する。
顧客戦略は時代を無視して構築してはいけない。時代はこれまで正三角形であった社会構造を二等辺三角形に変えた。正三角形と二等辺三角形を重ね合わせて生まれた差分が、いわゆる格差と呼ばれる層である。新客を作ることと、顧客をケアすること。フォーカスすべきは富裕層であること.これらは時代を見つめると当然の帰結なのである。
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