【2008.10.17配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
だいぶ昔になりますが、サンフランシスコの経営者に会いに行きました。つてがありましたから普通では会えない人にも会うことができましたが、どの人も金融会社のトップでした。これらはすべて投資銀行、ベンチャーキャピタル、M&Aなどを行う会社で物を作らないでお金を動かして価値を作る人たちです。
自宅にも招待されましたが小さな百貨店くらいの大邸宅に住んでいる人や、マンションといっても高大なビルディングの二層を自宅にしている人や、それは豪勢な暮らし振りでした。物を作って額に汗を流してお金を稼ぐのは古い経済のやり方だと彼らは異口同音に言っておりました。
アメリカの都市にある企業は、多くが金融をビジネスにしている会社です。この金融経済が破綻をしたら世界は大打撃をこうむることになります。
今回のサブプライム問題は金融ビジネスのほんの一部分にすぎませんから、これから次々と連鎖した問題が出てくることは確実です。その火種はネットや新聞にも取りざたされています。世界はまた昔のように、日本でいえば高度経済成長前の形に戻ろうとしているのかもしれません。
前のメールマガジンにも書いたことですが、私は仕事を通じてたくさんの企業数値を見ていますが、共通していることは売上げを構成する顧客数が年々減少していることと、頻度減であることです。売上げを構成する要因分析では、頻度1は顧客1と同じことですから確実に購入顧客数が減少をするということです。
大きな正三角形の上に小さな二等辺三角形を重ねて、頂上の部分だけ二等辺三角形を飛び出すようにおいて見てください。この二つの三角形の比較が過去(正三角形)と現在(二等辺三角形)を表しています。この小さな二等辺三角形こそが昔の形です。だからいま昔のパイの形に向かって進行しているのです。
経営の三要素とはヒト・モノ・カネですが、ここに顧客戦略を加えて経営の四要素にしていくことが、時代に生き残るために経営が取り組まなければならない重要なことです。
残念なことに日本の大部分の企業では顧客戦略はありません。ほぼ100%と言っても良いでしょう。私達が取り組んでいる企業を除いては。
高齢化社会、少子化社会、格差社会が目の前にあって、パイは大きな正三角形から小さな二等辺三角形に形を変えようとしているこの大競争時代に、売上げと利益を掌る唯一の存在である顧客戦略を持っていないのは極めておかしな話です。
なぜそうなっているのか。答えは簡単で高度経済成長時代の仕組みを変えられないでいるからです。
既存のCRMやSFAは顧客戦略ではありません。
流通業がやっているデータベースマーケティングでは顧客を育成する連続性が確保できません。SFAでも社内向けプロセス管理、つまりは営業担当者の行動管理や案件管理に走ってここには顧客戦略のかけらもありません。
本来CRM(SFA)は、顧客戦略であるはずでした。それがそうならなかったのは例えばCRMではデータベースマーケティングから一歩も出ていませんし、SFAでは会社に対して、営業担当者がやったことの後追い報告に過ぎないものをベースにしているからです。
私達はマスマーケティングを否定していません。同時にワン・トゥ・ワン・マーケティングがすべてとは思っていません。それぞれに役割が違う。ただ、マスマーケティング一辺倒ではもはや対応できなくなっているのです。顧客戦略のうち新規顧客開発は従来的な考えであればマスマーケティングを無視できませんが、ネットを使って創造した顧客のうち、特定した顧客を育成することがマスマーケティングに頼らなくても実現出来ます。一回購入していただいた顧客のうち、ポテンシャルの高い顧客をケアしてリピート率を高めることはマスマーケティングでは出来ませんが、顧客戦略に組み込めば実現できます。
ですからあらゆる手法をミックスして(マルチチャネル)顧客を創造し、維持育成し、LTVを実現する顧客戦略を仕組みとして確立する必要が企業に生まれたのです。受注やお買い上げは顧客戦略の成果なのです。それが流通業であっても、産業機械メーカーであってもまったく同じです。
本来はその実現こそがCRMの役割ですが、CRMは目的を失い、形を変えてしまっています。
日本企業のためにも宮崎県知事ではありませんが「どぎゃんかせんといかん」なのです。
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