【2008.10.24配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
昨日のことですが売上げ一兆円を超す産業機械メーカーのCRM責任者と、自動車ディーラーのトップとに続けて会いました。
CRM責任者の話をまとめますと次のようになります。
「これからの企業に求められるものは全社横断的な顧客戦略である。我が社のように顧客企業を識別できる企業では各部門ごとに明確な顧客戦略は作っているが全社の観点で見ると部門ごと顧客戦術の域である。総合的な顧客戦略の構築こそが次代を生き残るために急を要する経営戦略である」
ここまで分かっている方がいることに驚きました。その通りだからです。
幾度も繰り返しますが日本の企業には総合的な顧客戦略はありません。うちは明確にあるとおっしゃる企業もありますが,中身を聴いてみると顧客ターゲティングをしていることと、ターゲティングした顧客に向けての訪問スケジュールが出来ているくらいです。
これも顧客戦術の(戦略ではない)一部でしょうが,戦略とはいえません。
総合的な顧客戦略とは何でしょう。私達が実現しようとしていること、すでに幾つも企業に導入をしていますが,顧客戦略の肝はマーケティングコントロールセンターがあって、新幹線の総合司令室のようにすべての顧客戦略の運行を可視化し、問題点を見つけ、修正し、売上げをコントロールしているところにあります。
産業機械メーカーにあっては、製造部、新製品開発部門、営業部、保守サポート部門が顧客のプロファイル、(当然ながら納入機種各種情報、・・・納入年月日・納入機種名・製造番号・バージョン・稼働状況・クレーム情報・などなど)及び当社におけるグレードなどのステイタスとRFM情報から分かる現在位置など)を常に可視化出来てどの顧客に次年度に何を提案すれば、ジャストタイミングになるのかを分かるようにすることです。
営業部は顧客企業の関係者をユニット化出来ていて、営業担当者と顧客企業の関係者との関係深化度が可視化できるようになっていることです。
それだけでなく産業機械メーカーにあっては、保守メンテナンスコントロールセンター、新製品開発コントロールセンターもあって、すべては顧客戦略に組み込んで運用されていきます。
B2BとB2Cは違うといいますが、顧客戦略の目的として考えるとB2BとB2Cとはまったく同じです。顧客目的は顧客を創造すること、次々と顧客を創造していくこと。創造した顧客を一回限りの顧客にしないで維持し、育成をすること。離脱を防止すること。顧客をケアすること。
繰り返し購入いただくこと。継続した長期的な関係を持続させること。
そしてLTVを実現することです。だから産業機械メーカーだけでなく流通業でもまったく同じで、ここに向かって総合顧客戦略は全社が横断的に仕組みを構築していくことで初めて戦略になって経営に対して影響力を発揮することができます。顧客だけが唯一売上げと利益を作ってくれる存在なのですから。
日本に発売されているSFAは、日報かBPRで組み立てられていますから、機能通りに導入すると営業活動の報告に留まり、ここには顧客戦略のかけらも仕組みとしてないのです。このことはユーザーも気がついてきていて、BPRでは営業担当者のモチベーションが下がるだけで何の解決にもならないという声が高まってきている状況です。
さて、昨日は自動車ディーラーのトップと話をしましたが、彼はかつて非常に優秀な営業でした。
その彼がいうには
「最近の営業マンは、顧客の心というものを分からない。例えば顧客が、電動ミラーが動かないとクルマを持ってくる。クルマを見た営業がミラーそのものを手で動かしていたらカチャッとはまってミラーが電動するようになった。顧客はすぐに直って喜んでいる。そのままお返しをすれば顧客の心にはあのセールスマンからお世話になったと感謝が残るのに、この営業はすぐにこのクルマを下取りにして新車を買いませんかとセールスに入っている。これでは感謝の気持ちも消えて、次に電話を掛けてもつながらなくなる」
というものでした。
顧客をケアする重要性がディーラートップの話からもひしひしと伝わってきました。
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