【2009.12.04配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
最近、訪問型営業のBREA理論は、営業数値を集計するSFAというよりも新しい時代に合わせての営業プロセス改革の観点で企業から注目をされています。
これほどの時代転換期にあって、これまでの高度経済成長時代に合わせていた営業プロセスでは対応ができないことは言うまでもない事実です。
いま日本中の経営者が危惧することはコモディテイ化への恐れです。なぜ恐れるかといえば、どこの企業でもコモディテイ化が進んでいるからです。
先日相談がありました中堅メーカーの経営者は、顧客は機械重量を鉄の価格で換算して、そこから価格交渉が始まると嘆いていましたし、ある大手メーカーの取締役も、我が社の価値とは何かを定義することが重要な経営課題になっていると洩らしておりました。
また大手ゼネコンの役員は、わが業界はコモディテイ化の道を進んでいると言っておりました。コンクリートも鉄筋もエレベーターも競合他社と格差をつけることができない。
したがって価格差だけが競争優位の条件になっているというのです。
こうしたことは成熟化社会がなせる現象だと一般には考えられています。しかし私にはそれだけでなく企業がモノを中心とした経営三要素体制を組んでいるからだと思えます。
たしかに潮流はデフレスパイラルに向かって流れています。企業にカスタマープリンシプルが存在していないことが、その結果すべての価値を製品に求めることが最大の危機といえます。コモディテイ化する要因はここにある琴に気付かなければならないのです。
私はかつてメーカー勤務時代にこんな経験をしました。
市場からA製品とC製品の間にBの処理能力を持つ製品を造って欲しいという要望がありました。
そこでB製品を造りました。プレス発表のときに製造部の設計担当者はこう発表したのです。
「この機械はA製品と比べて処理層を容積で○○立米大きくしただけです。構造的にはAとまったく変わりません。駆動機構は処理層が大きくなった分だけ力を増やしましたがあとはAと同じです。まあ、Aを改造しただけのものです」
私はB製品を使用することで生産性がこれだけ上がり、A製品と比べて単位当たりのコストはこれだけ下がる。据付面積がAと同じようにコンパクト設計をしてあるので現有スペースを使ってこれだけの生産量が上がり売上に換算すると同じスペースを使って年間いくらの売上が実現できる。
などと、顧客が求めている価値をあらゆる観点で実現できる資料を用意してありましたが、まったくセンスのないプレス発表で終わりました。この話は30年も前の話です。
いまは据付面積などの陳腐な話題で価値が伝わる時代ではありません。
けれどもいま、事務所に相談がある話を聴いて感じることはまさにメーカー発想から抜け切れていないということです。
「うちのセメントは競合のセメントと同じものだ。うちのモーターは競合のモーターと同じものを使っている。競合も我が社もまったく同じエレベーターを勧めている……」
顧客はモーターの比較をしていませんしセメントの比較をしていません。
顧客が求めている価値が顕在化していれば、そこに企業は群がります。据付面積が小さいとか、単位あたり生産性が25%アップしますといくらでも価値実現に向けて製品改良を行います。
大事なことは顧客にも潜在している価値をいかに発見するかなのです。それは顧客との関係性を通じてしか実現できません。顧客との信頼関係を構築することでしか価値を発見することはできません。
企業は営業の型を再構築しなければコモディテイ化への道に落下していきます。メーカー発想であればあるほど、技術者発想であればあるほど、コモディテイ化への道に落下していきます。当然です。彼らには製品とは使用する部品とその組み合わせしか頭にないのですから。
そんなわけでBREA理論を我が社の建て直しに使いたい、我が社の営業再構築に使いたい、まずは営業教育から入りたいというオーダーがたくさんあるのです。
どなたも、SFAは営業数値の集計システムだ。それ以上でもそれ以下でもない。SFAで営業再構築はできない。できるのは見渡すとBREAだけであるということです。
ある大手企業の人事部教育課長がこういっておりました。「いままで我が社では訪問軒数と受注率だけを管理していた。売上が伸びないのは訪問軒数が少ないからだという論拠を立てていた。ある有名コンサルティングファームの提案に社長が同調し高いお金を払って今もやっている。しかし営業は疲弊し、売上は逆に下がった。私はこれからは顧客との関係性をいかに深めるかだと思っている」。
そうなのですが、関係性とはなにか、関係を深める目的は何か、深めたら何をするのかがまったく答えをもっていませんでした。営業関係の時代はようやく第一章が閉じて第二章の幕開けが始まったように思えます。
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