【2009.12.11配信】
このテーマは1995年ころ、私たちがワン・トゥ・ワン・マーケティングの勉強会で議論していたことでした。
市場シェアとは市場占有率を高めること、つまりは新規顧客数を拡大する考え方です。航空戦に勝つための法則であるランチェスターの法則をマーケティングに取り入れたのは経営コンサルタントの田岡信夫さんでした。私も田岡さんとは交流があり、セミナー講師として招聘したこともありました。惜しくも84年に逝去されました。
田岡さんは学者肌の物静かな方で、統計学を専門的に行っていました。ランチェスターの方程式が統計学者である氏の、どこの琴線に触れたのか分かりません。またランチェスター法則の数値が実際にビジネスに当てはまったのかは正直に言いますと疑問です。航空機同士の戦いでは初期戦闘機数に限界がありますから、最後は勝敗が決まりますが、ビジネスの世界では競合は無数に湧いてでるように増えるからです。勝ったと思っても次の戦いが始まる、いや、複数の競合と複雑に戦う今日、一騎打ちの法則、集中効果の法則、強者の戦略、弱者の戦略など第二次世界大戦時の航空戦をモデルにして出来上がった勝利の原則は今の時代には古典としか映りません。
けれども高度経済成長時代にはいかにして市場シェアを伸ばすのかというマーケティング論は、時代が成長期であることも重なって実にもてはやされました。
いまでも市場シェアを高めることが強者の戦略であると信じる企業はたくさんあります。
たしかに間違っているわけではありません。議論すべきは時代背景の変化と手法の変化なのです。
今のように超成熟化し、少子・超高齢社会は人口減、需要減に至りますから、強者の戦略を実現しようとすると、当然のことながら市場シェアを高めるために価格を下げて競争優位に立とうとします。消費者物価が10ヶ月も連続下落しているのはこうした動きを企業がしているからです。
市場シェアを高めることを目的として企業が手法を選ばず実行する時代は終焉しているのです。市場シェアを伸ばすためには顧客シェアを伸ばす手法を選択しなければならない時代になっていることに気付かなければいけません。顧客シェアを伸ばした結果が充実した市場シェアを伸ばす結果になります。
顧客シェアとは、できる限り当社から購入いただくこと、多品目を買っていただくこと、長期間購入いただくことが実現する状態を指します。
一見すると夢物語のようですが、顧客シェアを実現するために完成した仕組みこそがカスタマープリンシプルです。
こうした顧客になっていただくこと、顧客自らがこの3つの状態を実現するために駆け上がっていただくこと、この実現が、カスタマープリンシプルが目指す方向性です。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、顧客シェアの拡大を図った手法です。このマーケティング手法が日本に紹介されたのが1995年。それから14年が経過しましたがようやく真の意味でワン・トゥ・ワン・マーケティングを研究し導入する時期に差し掛かったといえると思います。
市場は椅子取り合戦の様相を呈してきています。需要という名の椅子を奪い合うこの競争には、椅子はいつも座りたい人の数より一つだけ少ないのです。だから椅子の奪い合いが起こります。勝ちたい企業は価格を下げて受注を図ります。コモディテイ化しているとはこのことを指しているのです。
市場シェアだけを考える企業は商品をブラッシュアップしようと努めますが商品の価値はさほどに違いなく、瞬間風速では勝ってもすぐにライバルに巻き返されることを続けています。
すべては顧客シェアを無視してきた結果です。
それはそれでやっている方は面白いゲームのような感覚になれるでしょうが、企業は地道に顧客シェアの拡大を図るべきで、真の勝利は顧客シェア拡大の仕組みを構築して展開した企業の頭上に輝くでしょう。
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