【2010.01.08配信】
新年おめでとうございます。ブレアコンサルティングの服部です。
本年もよろしくおねがいいたします。
日本経済はなぜ混迷を続けているのでしょうか。メディアはGDP世界二位の座を中国に奪われるなどと報道を続けています。東西冷戦の終結とは、東が西に負けたということではなく、東側各国が階級闘争を放棄し経済成長に軸足を移すことの宣言に他ならないのですから、そうなれば人口の多い国が、GDPが増えていくに決まっています。中国がそのことを如実に物語っています。同じようにして自動車の販売台数世界一は中国に移ったと報道を繰り返していますが、日本の10倍もの人口を抱える国家が高度経済成長時代を迎えたのですから自動車の販売台数が世界一になるのは当たり前です。マクロ経済学者は日本経済の混迷について過去の統計数値を並べ立てていますが混迷を脱出できる明快な回答はできません。マクロ経済で日本経済の混迷は語れません。
メディアは最近、需要なし!というキャッチフレーズを使うようになってきました。超成熟市場では需要は存在しないというわけです。確かに企業も個人も必要なもので所有していないものはなく、購入しなければ成り立たないような商品は存在していません。どれもこれも所有しているものばかりを売っているのです。分かりやすく言いますと満腹な顧客に食事を勧めても食べる人はいませんよということです。これがメディアのいう需要なし!の正体です。
そこで新製品開発に焦点が当たっています。日本経済が混迷から脱するには新しい商品開発しかないというわけです。家電メーカ-が躍起になっているのが3Dテレビの開発です。薄型テレビの価格が垂直落下し利益の薄い商品になってしまいました。そこで立体テレビであれば薄型テレビの3倍ほどの値段で売れるし、ブルーレイは必須だしということでしのぎを削っているわけです。しかし振り返ってみると薄型テレビも同じようにして開発されたのです。
新商品競争の話はまだあります。エコの技術は、日本は世界一だからエコ技術で日本経済は復活すると言うものです。
けれでもエコに携わっていない業種はどう復活するでしょうか。EVをつくらない企業はどう経営を立て直すのでしょうか。
私は顧客マーケティングの専門家としての立場でいまの日本経済の混迷を考えます。
まず、企業が自由闊達に発展する場ではなくなり、管理統制の場に化してしまいました。
その要因を探るとやはり、経営三要素しか経営手法の道がないことにたどり着きます。
ヒトとモノとカネの三要素を対象にした経営を運営していたのでは、管理統制の道に進まざるを得ないのです。日本企業はこのことに早く気付かなければならなかったのです。
日本では敗者復活はなかなか難しいといえます。個人でも企業でもです。組織内でも、一度失敗をすると復活することは困難です。島国根性、村社会という民族固有の特質もその要因でしょう。企業ではヒト、モノ、カネはすべてコストですから、売上を伸ばすことで成長するのではなく、雑巾を絞るようにコストを管理統制して利益を出す場に企業構造が変わってきている結果ともいえます。
ヒトとモノとカネにしか経営の道筋がないから、人を管理統制し、新しい売れ筋を求め、資金をできる限りコスト化しないようにして日本企業は、バブル崩壊後を過ごしてきたわけです。不透明だからコストを管理統制して失敗をしないように、敗者にならないようにしてすごしてきたのです。
その結果国民一人当たりGDPはOECD30カ国のうち18位〈2006年度〉にまで低下してしまいました。
高度経済成長時代に培った経営三要素体制を時代が変わった今でも変えることができなかった結果です。
顧客要素を持たない企業はマス・マーケティングを展開する以外に道筋を持たないのです。
問題はここにあります。需要なし!とまでメディアが叫んでいる成熟社会にあって、企業はマス・マーケティングで顧客の心にたどり着けるのでしょうか。
ヒト、モノ、カネは経営に不可欠です。そこに顧客を加えた四要素経営体制の構築こそが日本企業がシフトする最優先課題です。なぜならこの経営体制を組み立てることで、顧客に対し何をしなければならないかが明確な道筋を持って見えてくるからです。
顧客に対して企業が行うこととは、関係を深めることに尽きます。関係を深めて信頼関係を獲得することです。すると顧客が求める価値を発見することができます。
営業は一つ一つの積み重ねです。この活動の成果が売上になります。
私は1995年当時にワン・トゥ・ワン・マーケティングを皆で議論しあいましたが、そのとき話題になったワン・トゥ・ワン・マーケティングを語るキーワードは「双方向」と「顧客との対話」でした。
それから15年後のいま、「双方向」での「顧客との対話」が企業に新たな道筋をつけることができる唯一のキーワードになるとは思ってもいませんでした。
顧客との対話については拙著今後50年を生き抜く新・経営パラダイムで詳細を述べております。
言い換えれば日本企業はステークホルダー、特に顧客との共生社会を構築する以外に生き残る道はないと言えます。
それでなければどこよりも安いですと大幅値引きを連呼する企業になってとことん価格ダウンの道を選択するしかありません。日本の企業の大部分は、安い中国製や、ベトナム、ラオスなどの新興国から作り出される商品と比して太刀打ちできる人件費を含めた企業原価構図をもっていません。どちらを選ぶにしても国内市場で生き抜く企業は骨組みから形を変えなければならないことは言うまでもありません。四要素経営体制を確立して顧客に対する根本的な方針を樹立してカスタマープリンシプル活動を推進し顧客との共生社会を確立するか、あるいはいつでもどこよりも安い販売価格に耐え得る原価構造を人件費も商品の品揃えも含めて再構築するか、双方の組み合わせか、いずれにしても答えはすべて顧客が持っているのです。
今年の企業は、マス・マーケティングとワン・トゥ・ワン・マーケティングの分かれ道に立っていると考えています。分かれ道に気付かない人たちはマス・マーケティングの道を進みます。いつまで経ってもマス・マーケティングの道を進みます。その道は紛れもなくコモディテイ化に至る道です。販売商品に価値を見出せず、したがって顧客の価値を実現することができない道です。安いだけがとりえの企業にたどり着く道です。
経営四要素に気付き、実行した企業だけがワン・トゥ・ワン・マーケティングへの道を進むことになります。ここは顧客との共生社会実現に至る道です。いつ気がつくか。気がついたときに初めて分かれ道が見えてくるのです。
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