【2010.01.15配信】
ブレアコンサルティングの服部です。久々に寒い冬を体感していますがお変わりなくお過ごしと思います。
テレビで、あるスーパーマーケットの売上が伸びている報道をやっていました。パートさんの中から力のある人を抜擢して正社員にし、売り場ごとの権限を与えたのです。
パートさんの多くは主婦の方ですから、顧客目線、主婦目線を持っています。
野菜売り場の責任者になった方は、お客さまから「キャベツが欲しいのだけれどうちは老夫婦二人なので一個では多いの。半分で売ってもらえないの?」と、聞かれると「はい。よろしいですよとその場で半分に切って半額の値段をつけてお客さまにお渡しする」というのです。
これまでは男性社員の上司に相談をしなければならなかったものが自分の判断で即決してしまいます。これが受けて売り場中に広がりおかげで売上が急上昇したというのです。
この番組を見てこれはワン・トゥ・ワン・マーケティングそのものであると思いました。
1995年から2000年当時、ワン・トゥ・ワン・マーケティングが大流行して、魚屋の商売や八百屋の商売に戻れという声が巻き上がりました。「鈴木さん、おじいちゃん元気にしているかい。美味い大根が入ったよ。半分にするからもっていくかい?」
これがカスタマープリンシプルでいう「顧客と関係性を通じて顧客の価値を実現する持続した共生活動」を具体的に分かりやすくした事例です。
八百屋のご主人は、鈴木さんがご主人と二人住まいであること。ご主人の胃腸が丈夫でないこと。大根を食べると消化が良くなるとご主人が言っていること。鮮度を保っておいしく食べるには大根一本では量が多いこと。これらのことは鈴木さんとの日常会話から、関係性を通じて顧客の求める価値を八百屋のご主人は知っていたのです。
だから顧客の価値を実現することがそのまま自店の価値を実現したことになるのです。
もちろん自店の価値とは商品が売れることに他なりません。
当時、八百屋の商売に戻れという声はかき消されてしまいました。スーパーマーケットでは同じような商品が大量に発泡スチロールの皿に盛られ、ラッピングされ、陳列され、顧客が商品を自分で選び、レジに持参する方法が一気に拡大して言った時です。
そのあとにスーパーマーケットに紹介されたのがFSP〈購入頻度の高い顧客をシステム的に判断してレジで価格を引き下げる〈優遇する〉システム〉ですがこれもなじみませんでした。
結局FSPはポイントシステムに代わって言ったことは周知のとおりです。
同じことはデパートでも言えました。
ショップの大部分がいわゆるテナントであり、しかも店員さんの多くはローテーションで仕事をしていますから毎日一つの売り場に継続出勤することなどできません。顧客と関係性を通じて価値を実現することなど、なじむ話ではなかったのです。
しかし今はどうでしょうか。レジにしか店員はいないのだから顧客との対話はできないといっていたスーパーマーケットが、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入し始めて成功をしているではありませんか。
この成功は、主婦目線の店員に権限を与えたことによります。利益を重んじスタイルを重んじる男性よりも、主婦感覚に近い店員が、顧客目線に立って顧客の価値を実現したことで大根が半分売れたのです。
たかが大根半分ではないか。残りの半分売れなかったらどうするのかと考えるのは男性です。
女性なら残った半分をラッピングし半額の値段をつけて陳列します。大根半分が顧客定着につながり、それが広がることによって顧客の支持を受けて前年比120%台アップという店舗全体の売上アップにまで発展していったわけです。
私はこのテレビ番組を見ていて、これからの営業活動とは顧客との共生活動であり、企業活動とはステークホルダーとの共生活動であるとの想いを強くしています。
こうした事例が社会にたくさん紹介されてくると顧客の意識が変わります。作り手、売り手側の一方的なビジネスに異を唱えることになります。顧客の行動が変わってくるわけです。
企業はそうした顧客の声を聞こうとしています。そして顧客の声を解決しようとします。
けれどもそれは絆創膏貼り現象なのです。顧客の声がでたから解決するでは後手に回ります。
いかにして顧客の価値を実現するか。日本中の企業は商品価値を高めようと苦労をしていますが、顧客の価値をいかに発見し実現するのかに次の経営戦略が掛かっていることに気付かなければいけません。
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