【2010.02.05配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
SFAの機能はほぼ固まって「営業活動の集計管理業務を俯瞰的に行うもの」と定義することができます。営業担当者のスケジュール管理と集計、案件進捗管理と集計、報告業務管理などが大部分の仕事です。
これら営業担当者の営業行動と案件進捗管理は、IT無しには実現できなかったことです。そこでSFAはITと連動して普及しています。
しかしSFAは企業にとって導入しては失敗を繰り返した歴史を持っています。市販されているSFAパッケージは過去に失敗を積み重ねて、失敗した機能の目的について成果を保証しませんと言い切ったものです。
言い換えれば営業活動の集計管理業務に徹したことでSFAは経営者の期待とは別に部分的な役割を果たしているものと言い換えることができます。
それでは失敗をしてしまったがゆえに取り外した成果目標、あるいは機能の目的について成果を保証しませんと言い切った機能とは一体何なのでしょうか。
このことこそが業務プロセスを設計する人たちにとっての苦悩の象徴であり、同時に光明とも言えることなのです。
■今のSFAで成果保証できないといわれているもの
(1)売上が伸びる。契約率が高まる。
(2)リピート率が高まる。優良顧客に育成できる。LTVが実現する。
(3)新規顧客が創造できる。
(4)案件進捗状況がわかる。
SFAはそもそもアメリカで在宅勤務者の営業活動報告業務をIT化したものとして生まれたものですからSFAパッケージに上記のことを期待することは間違いです。
ですからSFAを導入しても、売上は伸びません。契約率は高まりません。リピート率は高まりません。優良顧客に育成できません。LTVは実現しません。新規顧客は創造できません。案件の進捗状況は正しくありません。これらは実現を保証しませんということです。
SFAは営業活動の報告をIT化したものに過ぎず、顧客戦略などどこにもありません。優良顧客に育成するための戦略も戦術もプロセスもアクションもありません。
SFAで優良顧客を育成することはできません。
だから企業の期待が実現するはずがありません。営業活動を集計管理することと、上記4項目が実現することとはまったく別のプロセスです。上記4項目を達成するには別の業務プロセスが必要であると言うことです。
上記の4項目を私の目で説明いたします。
売上が伸びる、リピート率が高まる、企業が希望する優良顧客像に近い顧客が増える、新規顧客が増える、案件進捗の確度が高まる。これらはすべて顧客との関係深化の成果であり、パッケージ的に言えばCRMの成果として実現するべき目標です。
これらを実現するには売上が伸びるようなプロセスを立案する。それをアクションに変える。アクションを支援する体制を組む。プロセスからアクション支援までの動きを可視化してPDCAを回す体制を作ることが必要です。他の項目も同様です。
日本は、法人も個人も世界に冠たる成熟化しています。企業内も家庭も必要なモノはすべて揃っています。いつでもどこでも簡単に入手できます。成熟社会とは革新的な製品は誕生しない世界です。当然需要は沈滞します。その上国内市場は少子超高齢現象が顕著化し、需要総量が供給総量より縮小しています。もはや椅子取り競争です。
企業はここを打開するために大変な苦慮をしているのです。
ですから売上が伸びる、リピート率が高まる、企業が希望する優良顧客像に近い顧客が増える、新規顧客が増える、案件進捗の確度が高まることは、企業が生き抜くために絶対必要な条件といえます。
大企業では業務プロセスを標準化し、製造から販売、管理にいたる全部門に横串を刺して経営の標準化と効率化を目指しています。全部門とは製造の全部門、販売の全部門、総務、財務、人事、販売促進、広報、法務にいたる企業活動の全組織を言います。
分かりやすくいいますとSCMとERPとCRMをチェーン化すると言います。
しかしここでネックになるのがCRMです。
実現を阻むもの、それは世界レベルで本格的なCRMがこれまで生まれていなかったのです。もっと具体的にいいますと経営全組織をチェーン化できる観点での実践的な理論を伴った営業戦略(CRM戦略・顧客戦略)が生まれていなかったのです。
いまから10年前を思い起こしてみます。CRMブームが日本に起きました。世界中からパッケージが日本に紹介されました。
その時代のCRMは顧客接点活動とその集計管理業務が中心でした。言葉ではワン・トゥ・ワン・マーケティングが実現できる。優良顧客の維持育成ができる。LTV実現ができると言いながら実態はコールセンターなどのシステムでした。
CRMパッケージのE・ピファニーはシナリオ型CRMですが、このメーカーはキャンペン管理と言って販売していました。
本来は上位に顧客戦略があればシナリオに搭載する戦略は単純なキャンペン管理程度のものではなく、顧客と長期的・持続的に関係を深めることができる戦略全体のシナリオつまりは顧客戦略を搭載することができたのです。しかし残念なことにキャンペン管理と広報をして発売をしたがために持っている機能とは裏腹に日本では理解されませんでした。
そのほかのCRMパッケージといえばデータ分析をして顧客を絞り込み抽出するだけのものです。このことは先号のメールマガジンで詳しく書きました。
したがって日本にワン・トゥ・ワン・マーケティングの概念が紹介されて15年、CRMやSFAが紹介されてから10年が経過し、CRMやSFAパッケージも10年が経過しますが、その間、経営理念を営業戦略に落とすこともなく、営業戦略を顧客戦略に落とすこともなく、顧客戦略を顧客との関係深化プロセスに落とすこともなく、プロセスを
アクションに落とすこともなく、アクションサポートする体制を準備することもなく、今日まで時間をすごしてしまったわけです。すべては戦略を支える実践的な理論が欠落していたのです。
大企業が全業務プロセスをチェーン化し標準化する上で苦慮していることは案件進捗の確度です。
SCMとチェーン化する上では案件の確度(どの顧客と、いつ、契約され、どの製品が、いつ出荷され、顧客に納入されるのかという)情報は生産計画、デリバリー計画と連動します。このチェーンが確立すると製造は材料調達から工場の製造ライン予測、人員予測などが立ちますから画期的なプロセスが確立されますし、顧客-営業-工場がチェーン化します。また入金確度が高まりますとERPとチェーン化して資金繰り計画が標準化され効率化されます。こうして全社の業務プロセスが標準化され、海外への企業進出や統廃合計画なども画期的にスピードアップしてきます。
以上のように大企業は世界戦略を展開する上で世界共通の業務プロセスを持って標準化し、さらにはベストプラクティス経営にまで質を高めたいと考えています。
製造業が多い大企業は訪問営業に依存していますが、いまの営業活動を集計管理するSFAには戦略もなく、プロセスもなく、アクションもなく、要は営業活動の痕跡報告に過ぎないわけです。これが見えたところで何一つ企業の課題解決はしません。
大企業に関わらず全部の企業にとって
●売上が伸びる。契約率が高まる。
●リピート率が高まる。優良顧客に育成できる。LTVが実現する。
●新規顧客が創造できる。
●案件進捗状況が分かり確度が高い。
これらを標準化することは需要が縮小する時代に企業規模に関わらず急務です。
訪問営業の企業に真実のCRMを導入しなければならない背景はここにあるのです。
これらが実現するとマーケティングはコントロール部門に転換していきます。マーケティングの定義は激変します。
マーケティング部門はマーケティング・コントロール部門になり、営業だけでなく全部門のプロセスの進捗を可視化します。
その上でマーケティング・コントロール部門は、一営業担当者の、あるいは重要顧客の、重要案件の営業活動のすべて、顧客ユニット各員との情の関係進捗度、理の関係進捗度を可視化し関係進捗度を可視化します。これらはダッシュボードとして集計管理します。
そしてASK(顧客が求める価値発見・確認)プロセスの進捗度を可視化し確認していきます。阻害要因があればシステム的にアラームを出して次の一手を指示していきます。
マーケティング・コントロール部門は、営業担当者のアクションを支援するためにプロセスを進捗させるためのツール(神媒体、電子媒体)を管理しています。プロセスが進捗しないネックを捕捉して情の関係を促進するツール、理の関係を促進するツール、プロセスを進捗するツールをレベルアップして行きます。時にはマスマーケティングの制作内容さえもコントロールしていきます。
営業教育、人事評価基準の作成と変更はマーケティング・コントロール部門の業務です。
マーケティング・コントロール部門は、製造部門をコントロールするプロダクト・コントロール部門に製品開発・改良に伴うユーザー顧客の意見を吸い上げて集計整理した物を届けます。
こうしてマーケティング・コントロールはアクション支援から入り、プロセス変更、戦略変更を行います。
メーカーが真実のCRMを導入すれば一番の弱点であったマーケティングがこのように変化をします。
マーケティング・コントロール部門は、全社業務プロセスが完全に標準化できるだけでなく、人智を介して実施アクションまで紐づいた戦略転換を実施していくわけです。
メーカーの経営はこのように変わりますが、その鍵は真のCRM(顧客と関係性を築く戦略)が握っているわけです。
私は顧客戦略なる用語が顧客にとっては耳障りが決してよくないと思いますので、カスタマープリンシプル(顧客に対する根本的な方針)と名付けています。ここでいう真のCRMとは勝つ球―プリンシプル活動のことでありそれを支える理論がBREA理論です。
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