【2010.02.12配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
業務を集中して深く考えていると、いろいろなことが整理されます。そこで気付いたことを語ります。
SFAは営業活動の計測器であるとふと気付きました。この気付きは私にとっては有益でした。
今から10年前にSFAの大ブームが起きました。火付け役は大メーカーです。メーカーの経営者はSFAの宣伝に飛びつきました。SFAを知らせるHPにはこう書いてありました。
1.営業プロセスが可視化できます。
2.案件の進捗状況が可視化できます。
毎月の営業会議に発表される売上数字と、月末に集計される売上数字に大きな違いがあり、プロセスは見えず、案件進捗状況も見えないでいた経営者にとってはこれで経営課題は解決すると踏んだのでしょう。一気に飛びついたわけです。SFAパッケージの大手、シーベルなどはまさに門前の市場のような賑わいでした。
ここで経営者と売り手側にSFAの機能を巡って大きな誤解が生じていたのです。メーカーの経営者は工場でBPR活動をしてコスト削減に取り組んだ経験を持っています。営業プロセスが可視化できて案件の進捗が可視化できればこれで、営業改革は実現すると考えたわけです。
SFAを知らせるHPに書かれていたことは事実です。けれどもメーカー経営者の判断は大きな誤解を伴っていました。
分かりやすい例で話します。ダイエットをしなければならない人がいました。彼は体重計を手に入れました。そうして毎日計測しました。けれどもダイエットは実現しませんでした。
体重計は計測器です。
血圧を下げなさいと医師から指示されている人がいました。彼の妻は血圧計を購入し、彼は毎日血圧を計測しましたが血圧は下がりませんでした。
営業成績が上がらない営業部に社長はSFAを導入するように命令しました。SFAで営業プロセスが可視化でき、案件進捗も可視化できましたが一向に営業成績は上がらず案件進捗も実態とは異なりました。経営者の期待はSFAを導入しても叶うことはなかったのです。
このことはSFAが計測器であることを忘れていたことによります。100キロの体重の人が体重を減らすにはカロリーを制限し、運動量を増やし、ストレスを持たない生活をすることでしか実現しません。軽量すれば体重は減るだろうと言う期待は計測器機能の能力をはるかに超えているのです。
営業業務プロセスの基準を日本企業は持っていません。いままで精神論、根性論で培った営業プロセスがいきなりSFAに載せることで考え出したものは企業の都合で考えた製品の見積書を作成し契約をするまでの模範的なスケジュールであったからです。
SFAを導入した企業の営業幹部は、経営トップからこれで案件進捗も見えるようにしてあげた。プロセスを見えるようにしてあげたから、SFAを上手に使って営業成績を上げなさいと指示をされます。
営業プロセスが計測できたら、経営者の求めるように営業改革ができるとしたら営業プロセスの基準ができていて、実際と基準の差異がわかり、基準に照らし合わせてプロセスを改革する手順も分かっている場合だけ有効です。
事例で語りますと、血圧が高いと計測された患者が、医師の指導で食生活改善と、運動改善と、血圧降下剤を服用して定期的に計測する手順を実行した場合に限り、血圧を下げることができます。
営業プロセスをどのように改善すれば売上は伸びるのかとする基準がありませんと営業幹部は何を基準にして営業担当者を指導してよいか分かりません。そこで平均値を引っ張り出してきたわけです。
もう一つ、SFAでのデータでは訪問軒数が多い営業担当者は売上も高いと数値化されています。そこでいまは訪問軒数を増やせとどこの企業でも指令を飛ばしているわけです。
こうした流れは実はなんと10年間の出来事です。SFAを企業が導入した2000年から10年間も費やして、企業はこんなところにたどり着いているのです。
売上を増やすには訪問軒数を増やすことだと言う説は、昔と何一つ変わっていません。犬も歩けば棒に当たると叱咤激励して営業担当者を個別無差別ローラー訪問作戦に向かわせた高度経済成長時代の営業手法と何一つ変わりません。そこには営業プロセスも営業の質も、もっと厳しく言えば知性も存在しません。
スタート時の誤解。それはSFAが営業活動の計測器であることを認知できなかったことから始まりました。いまでもこの誤解は解けていないのです。SFAで営業改革を実現しようとする試みは続いています。本メールマガジンを読んでいただいていらっしゃる皆様はお気付きだと思います。SFAは計測器に過ぎないのです。目の前の実像をそのまま映し出しているだけのものです。改革しなければならないものは営業業務プロセスそのものです。
大企業では製造計画から出荷に関するプロセスの標準化作業はほぼ終わっていると言えます。
しかし営業部門の業務プロセスは手付かず状態です。
すると企業は全業務を標準化することも普遍化することもできません。ましてやベストプラクティス経営など夢のような話になります。
ここを何とかクリアしなければならないと大企業は業務プロセス課を組織して企業組織を横断して営業業務プロセスを標準化して業務プロセスを連結しようとしていますが、ネックは営業業務プロセスが標準化されていないために、ここでチェーンがつながらないのです。
10年前に日本に導入されたSFAは、体重や体温を測る計測器と同様のものであり、営業的な成果を求めるのであれば営業プロセスを根本的から見直す必要があると認識されれば、10年後の今日、時代が激変した時代に訪問件数だけを追い求め営業プロセス改革が放置されている現状の要因は10年前にあったと私は思います。
BREA理論が営業プロセスの基準になり得るとの認識は大企業の中から理解されてきております。
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