【2010.02.19配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
プロセスにはプロセスが持つ「目的」があります。プロセスの下位に紐づいているアクションも、目的が必ずあります。目的がある以上結果がでます。そこで「プロセスの結果が成果である」という金言は的を射た言葉であると思います。プロセスは目的である成果を実現するための工程、もしくは手段といえます。
日本では営業プロセスは重視されていませんでした。一方、製造部はプロセスが重視されていました。製造部では常にプロセスを見直し、加え、削除し、修正を図ることで改善を実施してきました。SFAの登場は営業のプロセスを可視化するという願ってもないことを実現したわけです。
さてこれからが本題です。
私たちが営業プロセスと呼んでいるもの。つまりSFA構築時に組み立てられていく営業プロセスは、実は営業プロセスと呼べる代物ではありません。その理由を挙げましょう。
製造は社内ですから社長は最高権力者であり、社長の指示であと5%コストを下げろと命令が下ればプロセスを見直し、修正をして、結果としてコスト削減5%達成の成果を導き出すことができます。実現できなければプロセスを見直す作業を再挑戦いたします。
営業プロセスは、プロセスには目的を持ち、プロセスの結果が成果であると考えると、(1)新規開発計画で案件を発掘すること、(2)案件化した商談を契約に導くこと、(3)長期的に持続した取引を続けることこそが、営業プロセスの目的と断言すべきです。
そして営業プロセスを進めることで、プロセスの目的を達成できなければプロセスとはいえません。
現状の営業プロセスと呼ばれているものは下記の5つのいずれかに当てはまります。
■会社の都合で作った営業が行うべきことを時系列で並べたもの
■見積書を作成するために行わなければならない手順をならべたもの
■契約できる案件はこの通りに進むと信じられているもの
■当社から買ってくださると決まっている顧客とのプロセスを並べたもの
■SFA導入時に、聴かれるままに理想形のプロセスを並べたもの
ここで皆さんが考えなければならないことは、社長の権限は社外には及ばないという事実です。社長は社内には指示命令をして従わない者、成績不良な者を組織から排除するほどの権限を有しておりますが、権限は社内に限定されていて、顧客に権限を波及することはできません。社長はお客さま回りをして、平身低頭ごもっともでございますと言っているわけです。
分かりやすく言いますと営業プロセス(CRM)と製造プロセス(SCM)を同じ視点では見ることができないという事実に気付かなければいけないのです。
営業プロセスは、繰り返しますが(1)新規開発計画で案件を発掘すること、(2)案件化した商談を契約に導くこと、(3)長期的に持続した取引を続けることが目的です。
話を分かりやすくするために事例を出します。
ある機械メーカーのSFAに搭載している営業プロセスと呼んでいるものの項目です。
このプロセスは新規顧客開発プロセスです。
(1) 訪問対象顧客企業絞込み
(2) 訪問計画立案
(3) 面談申し込み
(4) 自己紹介、会社紹介
(5) 工場視察申し込み
(6) 視察
(7) 初回ヒアリング
(8) 初回提案
(9) 顧客の反応確認
(10) 詳細ヒアリング
(11) ソリューション提案
(12) 顧客反応再確認
(13) 見積内容の詰め
(14) 見積もり提出
(15) 契約
この営業プロセスはどこが問題なのでしょう。もう賢明な読者の方々はご理解できていると思います。
これで案件を発掘できるのでしょうか。顧客から受け入れられて案件があるから参加しませんかと言って貰えるのでしょうか。ここには顧客が出てこないのです。
製造は社内ですからプロセスに参加する人はすべて社員です。したがって社内の都合で進めてプロセスを改善することで成果を実現できますが、営業で案件を発掘し、獲得する作業には、必ず顧客の参加が必要なのです。案件があるからと言っていただくことも、顧客が決めることですし、この注文はお宅に出すよと言っていただくことも顧客が決めることです。
価格決定権も、発注決定権も顧客にあるのです。ですから営業プロセスは顧客と一緒に進めていかなければ結果も成果も出ないのです。
話は大きく跳んで事例を語ります。エベレスト登山では頂上をアタックするのに入念な準備と、装備と、経験とが必要になります。これらはすべて一つのプロセスとして定義され構築されています。
例えばルーツ地図だけを与えられて頂上をアタックして来いといわれても実現はできません。
装備、天候、気温、風力、風向き、登坂者の訓練と評価システム、登坂者の経験と当日の体力、基地ベースとの交信設備、医薬品、医師、酸素ボンベ、食料、テント宿泊施設、食事調理施設,防寒服そしてルートを登坂するときの臨機応変なるプロセスの変更など、これらをまとめてプロセスというのです。
それに比較するとどうでしょうか。現行の営業プロセスは登坂ルート地図一枚だけのような
ものと思えませんか。これでは営業プロセスとは言えません。理由は申し述べたとおりです。
プロセスではないから結果がない。結果がなければ成果も出ない。こうして営業社員はSFA入力を余計な作業として見做し、入力を拒むのです。
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