【2010.10.01配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
5月28日にipadが日本で発売されて4ヶ月が経過しました。発売当時はビジネスが激変するなどのキャッチフレーズがメディアを飾りましたが、最新情報はどうなのか。
iPadを通して見えてくるものは何かを考えました。
■誰も彼もiPadの板しか見ていない。
華々しく営業社員1500名にiPadを持たせるなどとニュースリリースをした会社が現実に直面しています。
製品写真をiPadに載せて顧客に見せるとか、図面集を載せるとか、製品の稼動動画を見せるとか、導入を検討した企業は、このようなレベルで考えたのだと思います。
しかし担当を任された部門は次第に頭を抱えることになります。彼らの言葉を借りると「マテヨ?」という壁が立ちはだかってきたのです。
課題は次です。
(1)顧客は珍しがって見てくれても、やがてそれがどうしたと言われるのではないか。
(2)どれほど営業支援に役立つのか。皆目分からない。
(3)データのバージョン管理を精緻にやらないと混乱をきたすだろう。
(4)これでは益なきところに投資をすることにならないか。
まったくその通りです。iPadの板しか見ていないから製品写真を搭載するような類の発想しか思いつかないのです。
彼らにiPadで何ができるのか考えろと指示が出ます。皆が集まってブレーンストーミングを行い、思いつくままに会議資料のペーパーレス化とか、製品カタログを電子化してカタログ費用の節約とか、いろいろなアイディアがでるわけです。
やがて彼らは疑問に突き当たります。
「製品カタログをそのまま電子化しても読みづらいよな。拡大はできるといっても画面はグラグラ動くし、拡大するほどに部分しか見えなくなって俯瞰ができないし……
結局はiPad用の製品カタログを別個に作らなければいけないよな」
「すると今の人員ではできないから同じ位の人数が必要だよな」
「電子カタログを作っても紙は無くせないよな」
「iPadが珍しいものでなくなったら、顧客は意味のないものを見ないよな」
まさにこんな会話を繰り返して上記の課題にたどり着いているわけです。
iPad本が次々と出版されていますが,どの本もアプリの説明本です。アプリは毎日すごい勢いで出ていますから、iPad本は発売日に過去の情報本になります。原稿を出版社に入れた時点から出版日まで50日間、掛かったとすると一日150本のアプリが出るとして、7500本のアプリと、過去に出ている20万本にも及ぶアプリのバージョンアップした情報は本からは入手できません。iPad本は常に50日前の日刊紙を読んでいるのと同じなのです。
こんな具合ですから、iPadをビジネスで使うことがトーンダウンしているようです。
最近はニュースリリースにiPadの導入情報がでていません。そればかりかPCとiPadとどこが違うのかとする議論さえ生まれています。私の予感ですがiPadをビジネスで使う考えが消えてなくなるのではないかと考えます。
■営業プロセスを見ていないところに帰結します
iPadをプロセス進捗に使用するという発想が湧かないのは、誰もがiPadの板ばかりを見ているだけではなく、営業プロセスを進めるとする考えが企業内に生まれないからと思っています。もう少し過酷な言い方をすると日本企業には営業プロセスが存在していないのです。その元凶はいまの日報型SFAです。
日報型SFAは結局のところ営業活動のあり方を固定化しルール化してしまっているのです。
日報型活動には営業プロセスの概念は存在していません。
営業員の仕事は売上を実現することです。それなのになぜ日本の営業は売上を実現するためのプロセス作りに注力を注がないのでしょうか。ここがiPadをプロセス進捗に使用すると考えずに、単に画像を顧客に見せる発想で留まっている要因と思っています。
営業プロセスを進める結果が売上成果です。プロセスの結果が成果とする考えを持てばプロセスを進めるために使えないかと思うでしょうし、プロセスを進めることが目的とすればiPadの使い方も新たなものが見えてくると思います。
それがまったく見えてこないのは、プロセスを変えることがipadの使い方を考えることをはるかに超えた経営課題であることも否定できませんが、それ以前に企業文化の中に営業プロセスが存在していないことが問題です。
■ガラパゴス
営業活動についてだけを言いますが日本の営業はガラパゴス状態です。営業プロセスも営業プロセスを進める手法もなく、単に行ったことだけを上司に報告する日報型SFAは、SFAの原型である在宅勤務者が本社に行う電子活動報告から一歩も抜け出ていません。これは15年ほど前にアメリカで誕生したシステムです。この理論をそのまま採用していますが日本で適合した背景にあるのは根性論、もしくは営業量の拡大理論です。
日報による管理では、お前がんばれよしか言うことはありません。上司は科学的に部下を指導できないのです。
そして経営者や幹部が読み直す経営理論といえばドラッカーです。日本の営業は完全にガラパゴス状態になっているのです。
私の事務所にはiPadの使い方を求めて大企業の方々が大勢いらっしゃいます。iPadの使い方を考える人たちは広告宣伝部とか営業支援部の方々ですから営業プロセスをさわる部門ではないのです。
けれども私が唱えるiPadCRM(SFA)論によるプロセス改革論を聞いて、この考えなら自分達が抱えていた課題はすべて解消するとおっしゃいます。
すべての課題とは下記のことです。
・顧客は珍しがって見てくれても、やがてそれがどうしたと言われるのではないか。
・どれほど営業支援に役立つのか。皆目分からない。
・データのバージョン管理を精緻にやらないと混乱をきたすだろう。
・これでは益なきところに投資をすることにならないか。
■新しい動き
一方で営業員(社員)個人が持っているiPhoneを企業が活用できないかとする動きが出てきています。これまで情報漏えいを防ぐために、会社のPCを外部に持ち出すことも禁じていたことを考えるとどうしてしまったのかいうほど変化です。
このことが契機になってタブレット端末の効果的な使い方が営業の現場から生まれてくる可能性はあります。
さて、
iPadのいろいろな考え方を巡らせましたが日本企業は営業に関して言えば、古い手法にしがみつき、新しいものに対する反応が遅いです。時代の変わりように日本の営業部門は保守的になりすぎて、ついていけないのかも知れず、それも高齢化の所産かもしれません。
あるいは想像力と創造力が欠落してしまったのかもしれません。
iPadの行方をもう少し見守りたいと思っております。
コメント