【2011.03.25配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
外資の人たちが業務放棄をして一斉に首都圏を離れたケースとして百貨店のケースをお伝えしましたところ、たくさんの読者の方々から連絡をいただきました。
それは百貨店だけではなく、いろいろな業界で起こっている報告のようなお便りでした。
外国人にとって日本は異郷の地ですから放射能汚染から逃れるために自分の国へ戻りたいとする気持ちは理解できます。
私が不思議なのは、普通の人たちが東京を一時的に離れた行為です。
外国に一時避難した日本人家族はこれからどう暮らすのでしょうか。
避難してよかったと安堵したような災害が発生したら彼らは異郷の地で生きていく覚悟をしていかなければなりません。
何事もなくふたたび日本に戻ってきた人々を、顧客のために懸命に業務を守った人たちは暖かく迎えてくれるのでしょうか。
腹を据えて東京で生きていくしか方法はないのではないかと考える私は古いのでしょうか。
日本人は、社会と調和するDNAを持っていますから、このような被災が起きた時はその優れた面が出てきて、自分が犠牲になっても社会のために尽くす働きをします。和の文化が優れた働きをするのです。ですからこのような災難にあっても復興への士気は高く、この士気が奇跡を生み出すと思います。
東日本大震災は日本列島の国家の形を激変させていきます。
東京にすべての権力を集中させた官僚統制体制、いわゆる昭和16年体制が終焉をし、新たな官僚統制、平成21年体制が生まれると私は思います。
東京の電力使用量を賄うだけの電力量は、もはや安易に確保できません。
地方の原発計画はすべて中断をするでしょう。福島県民はなぜ東京に送電する電気を、福島県が負担しなければならないのかと議論が起きるでしょう。すでに原発が安全と言うなら霞ヶ関に原発をつくれと言う議論は80年代後半から生じていたことです。
東京電力は東京都が必要とする電力を賄うことができなくなります。一時的には計画停電で乗り切ることができますが、中期的には発電所から送電できる量内で消費量が済む体制を作らなければいけません。
経済大国日本を支えたエネルギーは電力と石油です。一極に集中した産業構造は昭和16年体制によってつくられました。
昭和16年体制とは、情報と文化を統制し画一的な日本をつくり上げた官僚統制体制のことです。
「限られた資源をもっとも効率的な産業構造の形成に使おう。そのためにできるだけ重複投資、過当競争をやめて、官僚主導・業界協調体制をつくるべきだ。そしてそれには中央集権的な指導が必要である」鍵カッコ内は東大講義録 堺屋太一氏著 講談社から引用。
この説明が明確に昭和16年体制が生まれた思想を言い当てています。
福島原発の損傷だけで東京のエネルギーが致命的に不足し、かつ新たな原発がつくれない以上、東京の電力を元通りに復活させる手段は見当たらず、そこで日本列島を改造し、国家機能や産業構造を分散させていかにリスクを分散するかの議論に当然のことながら変わります。
すでに25兆円とも試算される復興費用を掛けて、もともとシャッター下りているような高齢者が住む被災地市町村に住居だけを新築し、道路やインフラをつくり直しても復興と言えるのかという議論は巻き上がっています。
また、被災地は沿岸の狭い三角州のような平坦地に密集した地域であって津波の危険性は変わりません。次に20メートルの防波堤を沿岸沿いに造る意味はあるのかとする議論も出ています。
自然は人智を超えた存在ですから・・・・。
やがて、日本は戦略的な成長戦略と復興戦略を組み合わせたどのような国家の形、産業構造を構築するべきかの国民的議論がはじまると思います。これが昭和16年体制の終焉と、
平成21年体制の始まりと言えるものです。
しかし平成21年体制がどのように成長的復興戦略の青写真を描いたとしても、その実現には長期の期間と膨大なコストが掛かります。
その間、日本経済は停滞をし続けるのでしょうか。
この震災で被害を受けているのは産業界も同じです。私は震災後に多くの企業経営者と話をしましたが、整理すると経営者の志向性に二つの手法が導き出されます。
一つは、現状の企業構造と体制を維持することを最優先し、首都圏の経済が回復するまであらゆる投資を先送りし、コスト削減を実行し、耐えて行こうとする考えで、防空壕避難型というべきものです。
二つは、日本が構造的に変化することに対応して、この危機を機会と捉えて効率的に企業構造改革、特に営業改革を果たそうとする考えで、営業戦略改革型というべきものです。
営業戦略改革型とは、突き詰めれば型を見直し新たな型をつくることになり、それは企業の目的である顧客価値実現を目指すことに他なりません。
営業戦略の見直し論とは、営業プロセスを顧客価値実現にシフトすることです。顧客の価値を発見し実現できる企業でなければ生き残れず、それは成熟した製品をさらにブラッシュアップすることではなく、営業プロセスを改革することで実現する考えです。
価値を発見する営業プロセスは、・・・・・正確に言えば日本企業にはほとんど存在していません。
営業プロセスを持っているという企業であっても私たちが見るとそれはプロセスになりえないものです。ましてや顧客の価値を発見するプロセスはほとんどありません。
それでも営業はやってこれたのです。それは顧客企業との関係性が存在していたからです。
しかしこの大震災による顧客企業の意識の変化、そして行動の変化に営業個人の暗黙知では対応できるものではありません。
私は、防空壕に避難していれば、またすぐに日本経済は復活するなどと考えずに、この危機をチャンスと捉えて、価値を実現できる営業に改革した企業が生き残れる企業になると思います。
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