時は現代。勝連城に幻の村祭りがあるとうわさを聞いて、夜の勝連城に忍び込んだ子ども達は、過去と現在を行き来できる平安座ハッタラーの導きで、長者の大主に出会う。長者は、阿麻和利の無念を晴らして欲しいと一巻の巻物を子ども達に手渡す。この巻物こそ、阿麻和利の真実が書かれた物であった。舞台は巻物に書かれた物語を再演する。勝連城に忍び込んだ子ども達は巻物を読むことによって繰り広げられる阿麻和利の真実を知ることになる。
阿麻和利が加那と呼ばれた時代。加那が舟に乗って勝連の浜にたどり着く所から舞台は始まる。加那は村の精霊から祝福されて迎えられる。加那は村人のために懸命に働いた。徐々に信頼を得る。
当時勝連城には悪政の限りを尽くした按司望月がいて、村人は重税を背負い暮らしはひどく生活は疲弊していた。加那は、悪政に苦しむ村人の姿を見て望月を滅ぼすべく村人と一緒に立ち上がる。
望月を倒した加那は阿麻和利と名前を変えて第十代勝連城の按司となる。阿麻和利は広い海に目を向け海洋王国として勝連を発展させていくことを誓う。そして船を建造し貿易に力をいれ、勝連は大きく栄えていった。それを証拠に勝連城調査では外国~輸入した陶器のかけらがたくさん発掘されている。
首里城が島内を統一したばかりであったので、尚泰久王は力をつけ始めた勝連城の阿麻和利と、中城の護佐丸が目の上のこぶになった。なんとかこの二人を滅ぼしたい。
尚泰久琉球国王には金丸という策士が付いていた。金丸は策を巡らし国王に耳打ちした。国王の姫百十踏揚(ももとふみあがり)を阿麻和利に嫁がせましょう。そうして時を待って阿間和利をだまして護佐丸を討たせましょう。そのあとは・・・・・・・・・・。
金丸の策にしたがって、後に第一尚家と呼ばれた尚泰久国王は、娘を阿麻和利と政略結婚させるのであった。
やがて金丸のシナリオ通りに、国王の婿となった阿麻和利に「護佐丸が謀反を起こそうとしているから討伐せよ」と命令を出す。阿麻和利は、国王であり、義父の命令に従って大砲を使って護佐丸を倒す。
これで目の上のこぶが一つ消えた琉球国王は次に阿麻和利を滅ぼすシナリオを着手する。百十踏揚の付け人として勝連城に送った大城賢勇と連絡を取り護佐丸を討ち滅ぼした酒宴の夜に旅芸人の一座に化けた武士を勝連城に送り込む。阿麻和利の家臣達が酒宴で酔いしれている夜中を待って、大城賢勇は火薬庫に火をつけて城は炎上する。しかも城の外には首里城が送った兵隊が勝連城を攻めようとしていた。あらかじめ手筈をしていた護佐丸の二人の息子の手で阿麻和利は、刺される。
すべてを理解した阿麻和利は、勝連軍を整えようとする家臣に向かって「戦をするな、.戦になれば兵も村人も死ぬことになる。命を捨ててはいけない。平和に生きろ。私の夢は世界中の海に琉球の旗をたなびかせた船を走らせることであった」と叫ぶ。突然の事態に泣き叫ぶ百十踏揚に、お前は首里に帰りなさいと妻の身を付け人の大城賢勇に預ける。もう死はそこまで来ている。白装束を着た死神の手で阿麻和利はあの世に導かれる。この話しをうらずけるように勝連城の発掘調査でもこの城で争いがあった痕跡は何一つ見当たらない。
一巻の巻物によって繰り広げられた勝連城主阿麻和利の真実を知った子ども達は、かつて自分達の町を築いた阿麻和利が、これまでいわれていた話が嘘で、実はこんなに素晴らしい按司であったことに気が付く。「私達は肝高の子なんだ。私達は志の高かった阿麻和利の子孫なのだ。そうして阿麻和利は世界中の海に琉球の船を走らせようと大きな夢を持っていた。私達も肝高の子なんだから大きな夢を持とう。私達の船を世界中には知らせようと誓う。
この現代版組踊と名付けた沖縄ミュージカルを勝連の、肝高の中学生と高校生が踊り、奏で、唄い、演じているのだ。どの子を見ても、集団の最後部にいる子も自分が主役になったように精一杯、感情を込めて演技をしている。踊りも驚くほど上手い。
あなたは何者だ。何処から来たのか.何処へいくのか。この命題に肝高の子等は明確な答えを見つけた。「私は肝高の子。私は誇り高い勝連で生まれ、勝連で育った。私は勝連城の町に住んでいる。昔この地で起こった出来事は夢でも歴史話でもない。なぜならいまここにあの時のままの勝連城があるのだもの。いまと昔はつながっている。だから私は肝高の子。私も阿麻和利のように世界に目を向けてこれからの人生を生きていく」。
なんという地域起こしであろうか。確信的に掴んだ存在意義が自信を生み、その自信が、堂々と感動に溢れるおおらかな力を産みだした。舞台から生まれた熱き波動は熱波となって観客に伝わってくる。観客は肝高の子から本物の元気を貰う。
写真は画像をクリックして全体をご覧ください。
(舞台写真3枚は、あまわり浪漫の会から提供を受けました。著作権はあまわり浪漫の会に所属します。本文は一部をパンフレットから引用しているところがあります。
原作:嶋津与志、演出:平田大一、舞台監督:津嘉山弘、 舞台:月光道、音響:サウンドパッケージ、照明:新舞台、製作:あまわり浪漫の会
あまわり浪漫の会 ホームページ http://www.amawari.com