私は知友の運転で軽井沢へ出かけた。私としてはいつもなら夢を見ている時間に起きて早朝に東京を出たが、関越はすでに渋滞30キロメートルであった。しかし知友と一緒なら時の間は持てる。関越は道路設計に誤りがあった。嵐山あたりに意味なく上り坂がつくられていて、この坂で渋滞が人工的につくられる。上下線とも嵐山あたりに必ず発生する渋滞を越すとうそのようにガラガラ道路になる。この日もそうであった。
「今年の紅葉は汚いよ」との前知識が入っていたから期待もせずに雲場池へ向かったが、昨年に続いて確かに紅葉は美しくない。3年前のそれは美しい紅葉を記憶しているわが身としてはなんとも感動はなかったのだが、それでも観光客はシャッターを押し続けている。写真を見ると十分に美しいではないかとしかられそうだが、今年の紅葉はだめだ。
私たちは雲場池のほとりにある雲場亭に上がって珈琲を飲んだ。まだ緑色のもみじもある。この葉は紅くならないで枯れてしまいそうだ。
いつも訪れている森へクルマを向けた。6月にうすばしろ蝶が乱舞していた森だ。ここも紅葉葉今ひとつであった。けれども「どうだんつつじ」は紅葉している。
上の写真は大もみじを映しているが、下の写真は大もみじを背にして同じ方向を映したものである。木々を比較すれば同じ森であることにお気づきいただけよう。春と秋とで森はこれだけ姿を変える。
今年は確かに自然が奇妙であった。例年だと実る栃の実は一つも落ちていなかったし、まゆみの実もなかった。真っ赤な実のやまぼうしも今年は一つも実を付けていなかった。
そして大もみじも大部分の葉は色づかず枯れ葉と化している。
私たちはクルマで1時間ほどかかる万座へ足を向けた。万座は火山臭のにおいと煙が立ち上る、まるで火山口の内部にできたような温泉街であり有名なスキー場である。
上の建物が万座で一番の人気を誇る豊国館だ。この写真は隣の万座高原ホテルから撮影したもの。この湯は確かに絶品だ。ネットの評価でも万座で一番で満点がついている。しかも日帰り入浴料が一人500円。ひなびた湯で湯上りのお湯もあったのかなあ。気がつかなかったなあという湯である。しかしこの湯は本当によろしい。
万座から軽井沢へ戻る道路は葉がたくさん落ちていた、三笠通りの落葉松も黄色に色を染めていた。もう秋は終わりなのだ。これから4月までグラデーションのある冬が始まる。
軽井沢の冬は、冬秋(11月)、冬(12月)、冬冬(1月)、冬冬春(2月)、冬春(3月)春冬(4月)に色分けできる。光が違うのである。
私たちは軽井沢へ戻って静かに珈琲を飲んだ。知友はゴルフもしない服部さんがなぜ毎月軽井沢へ来るのか不思議でならなかったが今日、そのわけが分かったと言った。外のどうだんつつじはきれいに紅葉をしていた。私は森がすきなのだ。ボツボツと自然の中で暮らしたい気持ちになってきたのだ。この気持ちに素直でありたいと考えている。
私は11月14日に今年最後の軽井沢へ来ることが決まっている。K教授と一緒に朝吹邸を観るためにである。これが今年の最後だ。そのあとはタイヤを履き替えないと難しいであろう。私は冬タイヤがない。軽井沢在住の知友は冬が一番好きという。そうかもしれない。来年一番寒い時期にレンタカーを借りて冬を走ってみたい。