2月上旬は講演会が多かった。午前に始まるセミナーは万一に備えて会場近くに前泊をした。ここは品川駅前のホテルパシフイック東京である。ベッドに枕が四つもあり、不要なものをベッドに残して睡眠しようと思ったがそれらが邪魔してなかなか寝付けなかった。カーテンを開けると朝焼けの空が飛び込んできた。春は曙とは枕草子の一節であるがホテルの窓から眺める曙の風景はそのような風情であった。
インターネットから予約をしておいたが、主催者側の計らいで部屋のグレードをアップしてくれた。部屋にはわけの分からない装飾品がいくつもあって驚いた。ホテルでは盗難を恐れて部屋には高価なものを配置しない。私はこういう軽薄な装飾が部屋を豊かにするとは思えない。むしろ無いほうがよいのにと思ってしまう。
始まり前の時間である。私は席に着いて時間を待っている。この日は500名を超える入場者があった。ありがたいといつも思う。早朝から私の話を聴きにいらっしゃっていただける。ヒトはヒトによって支えられて生きている意味を痛感する。そのために専門性を深めてよい仕事をしなければいけないと思う。
この講演会を通じてテーマを深く考えたことで新たな発見があった。かなり前に書いて熟成するのを待っていた原稿を読み返したら古くなっていた。私はこの原稿を生かしながらも新たなテーマに取り組もうと決めた。