ここが街の真ん中にある蒸留所。
寒そうな街だなあ。
先の号でお知らせしたBOWMOREは、いまはサントリーの所有になっている。フォートウイリアムにあるベンネヴィス蒸留所はニッカが所有している。日本には結構こちらのウイスキーを好む人が多いから、そういうことになるのかと思う。私も飲む時は一番ビートの香りがきつい奴と、わけの分からない注文をしている。最近はイギリスでもこちらのウイスキーを見直す雰囲気になっているようなので、それはよいことだ。
イギリスはUKで、民族の紛争があるのはご承知の通りだ。英国領土をかつて支配していたのはケルト民族である。ケルト民族は先住民族を排除してこの地に住まうのだが、やがてイングランドに攻められ、迫害される歴史を持つ。イングランドとはゲルマン民族とフランス民族が結合して生まれたいまのイギリス人の原型、アングロサクソンである。
ケルト民族は北へ逃れ、しまいには不毛の地にまで追いやられる。岩盤だけで植物はないこの地にケルト民族は、岩をこまかく砕き、その上に海草を敷いて畑を作る。加治隊長から送られてきた写真を見ても寒々しく、岩盤島であることが良く分かる。
ケルトの音楽は明るく急テンポである。この音楽に合わせて早い踊りをするのだが、きっと寒さに負けないように身体を動かすことが目的であったのかもしれない。また短調の暗い旋律であったらきっと人々の心は滅亡するだろう。自らを奮い起こすためにケルトの音楽は明るいのだと私はこの写真を見て感じ入った。
寒冷地にとってウイスキーはスピリッツである。身体を温め、ついでに心まで温めてくれる。文献によるとこの地のウイスキーのほうが歴史は古く、アイルランドへ遠征に出た軍隊によってスコッチができたとなっている。
加治さんへ
伝説のアーサー王がケルト民族であったことは知っていましたか?人間は知識の範囲が地球の形です。つまり自分が知らないものは地球上に存在していないことと同じです。誰かが賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶと言ったということになっていますが嘘です。私なら賢者は経験に学び、愚者は歴史に学ぶといいたいです。なぜなら歴史は現代人の創作物だからです。
半年も日本を離れて仕事辞めてこれでいいのか自問自答を繰り返しているとおっしゃっておりましたが、人間にとって経験に勝るものはないのです。お時間がありましたときに私の「旅の寄り道」初号をお読みください。大いなる経験が大いなる加治さんを作り上げています。人間はいまを集中して生きることしかできません。空を飛ぶ鳥は明日を思い煩っているでしょうか。
「一日の苦労は一日にて足れり」はマタイ伝第6章にある言葉です。「日々新たなり」は、四書五経に出てくる言葉です。誰しも先が見えないと思う時があります。私だって自慢できるほどたくさんありました。でも人間は過去に戻れませんし、未来に飛ぶ事もできません。いまを集中して生きるしかないのです。それが良い過去になり、良い未来につながっていくのです。無宗教の私でさえも「神の国とそのただしきとを求めよ。みな汝らに加えらるべし、この故に明日のことを思い煩うなかれ、明日は明日のことを思い煩え、一日の苦労は一日にて足れり」という聖書の一節は、まじないのように未知への不安を取り除いてくれました。また便りをください。