奈良に住む友が私を訪ねて来てくれた。私は感情を抑えながらも心の中では、うれしくてたまらなかった。3年ぶりの再会であった。彼は早稲田大学を出て外資の有名コンピューターメーカーに勤め、出世した。私のことをどうして知ったのか、どうして出会ったのかは覚えていない。私が考案した理論を賞賛し、先頭に立って大企業に提案してくれた。それからドイツの世界的な企業にも紹介をしてくれた。
紹介をいただいた大企業から、5年後にお声がかかって我が社は顧客戦略構築コンサルティングを行なっている。友にはその事実だけを伝えた。彼は感慨深い表情で喜んでくれた。
友は勤務していた企業を定年退職し、別の大企業に勤務していたが、人生を前向きに生きようと考えて退社した。近々会社を設立して、人生を駆けぬけていこうと決めた。
「また服部さん。仕事を一緒にやろう」と友は言った。そのことを伝えることが上京した第一の目的であった。第二は大阪の某上場企業に対する顧客戦略導入コンサルティングの案件を持ってきてくれてその打ち合わせであった。
いつもなら早い時間から酒を誘って新幹線の遅い便で帰阪するのが慣わしであったが、この日は4時から月曜日に訪問するコンサルティングの内容について社内で議論をすることが決まっていた。
私も今日、訪ねてくれた友には、いつもどうしているかと私なりの気遣いをしていた。だから電話があったときはうれしかった。友を玄関で見送った後に考えた。人は人によって磨かれる。人は人によってのみ癒される。人は人に一喜一憂を与え、人は人から一喜一憂させられる。人間のことはすべては関係性から生じている。この再会には感謝をしたい。