雪が深々と降り積もっている時が大好きだ。雪はあらゆる音を吸収して、いつもとは違う特別な音を私たちに伝えてくれる。この音は雪の音楽だ。真っ白な世界を障子に映し、障子はいつもとは違う光を部屋に放つ。これは雪がつくった映像だ。
きっと薪ストーブで燃える炎を眺めながら、雪の降る日に、手をストーブに当てて何にも語らずに過ごすのはいいだろうなと、そう暮らしたい次の暮らしを夢見ながら、早く実現をするように私はいまを生きている。
この週末は仕事をしないで、維摩経の物語をiPadで愉しんで読んだ。雪降る土曜日の日中、私はインターネットラジオでアメリカのFM放送を聴きながら、維摩経の物語を読んだ。
般若経や観音経と違って机上論ではなく舎利仏や文殊菩薩など並み居る世尊の弟子たちを圧倒的なレベル差を以て翻弄させてしまう維摩の豪快な実践的現場論であったので私にはとても面白かった。こんなに長編でこんなに面白い経があったことを私は初めて知った。知れば知るほど知らないことが増えてくる。それがうれしい。
東京では雪が降ると震災級の大騒ぎをする。困ったものだ。めったに降らないのだからもっと静かにして降った雪を愉しめばよいと思う。ましてや週末の降雪なのだから。