お茶ノ水に出かけて駅前のビル地下一階から地上に出たら、そこはニコライ堂の間近であった。
ニコライ堂は、お茶の水の風景を厳かにつくり上げている。函館の正教会はロシア正教会と同じだが、こちらは日本正教会らしい。東京は観光地が多いせいか、そんなに観光客が跋扈しているわけではなく、ひっそりとたたずんでいる。
長い間、こんな姿をしているとは知らずにいたので、たたずまいが一気に好きになりスマホ撮影をした。それほどひっそりしていたのだ。
オフィスに戻ると、自宅から持ち込んだ進藤 蕃〈バン)のカラフルな絵を壁に追加した。今まで哲学的な解釈を必要とする絵をかけていたので、このような哲学とは無縁で、いわゆる売り絵というやつだが、進藤蕃独特の色づかいが目立つ絵を加えるだけで、室内がぽっと明るく見えるから不思議だ。
そこで、絵を二組持って時折取り替えて組み合わせて使い分けようという気になった。折しも脇田和画伯の絵が売りに出ていた。脇田和は大好きな画家のひとりである、軽井沢に自身が名高い建築家吉村順三に設計を依頼し建立した脇田和美術館があって軽井沢へ2回行くうちの1回は寄ってくる。それほど好きなのだ。とても大事なことをテーマにしているのに、どの絵も何とも美しいのである。
この絵はおもしろい買い方をした。夜中に目が覚めて時間を確認するためにスマホをつかんだ。偶然にこの作品のページが開いていた。きれいな青だなと思った。寝る前に見ていた脇田 和画伯の絵である。夜中に目が覚めて再度出会った絵を欲しいと思って寝ぼけ眼で入札ボタンを押した。その後のことは記憶にない。時間を見ることも忘れて寝入ってしまったのかもしれない。
東に窓があるわが寝室は朝日が入ってとても明るくなる。なんか入札したようなしないような気がした。調べたら3点も入札していた。残りの2点はすぐにせりあがったが無視していた。しかし、脇田 和画伯の絵は、気になって、これも何かの縁かもしれないと思い、買うことに決めた。
作品は水彩画でF3号と小さめの絵であった。この絵はとても良い。見る人によって見え方が違う。想像力を豊かに持てば、いろいろなテーマを引き出せる。むずかしい絵である。だが誰が見ても美しくのびのびとしていると感じるだろう。
脇田 和画伯は、鳥をテーマにして絵を描いた。若くしてドイツに留学し、ドイツで絵を学んだ。戦争になり、ヒットラーの戦争を見てきた。脇田 和画伯は、平和を愛し、戦争を嫌った。鳥が元気に羽ばたいている姿で平和を表現し、椅子のシートに横たわっている姿で戦争の悲惨さを描いた。この絵は鳥にも見えるに逆から見れば魚にも見える。鳥ならこの青は空に決まっているし、魚なら深い海の青に決まっている。
この絵は、明後日に届く予定だ。マットの切込みと額がいま一つなので、絵が届いたら、絵を持って額縁屋にでかけて、お気に入りの姿に変えようと思う。