舞台が終わると出演者はみな観客を見送る。中学生から老人まで観客層は広い。
女学生は憧れのスターを見るように、感動に満ち溢れた目をしている。まるで宝塚を見ているようなものなのかもしれない。けれども内容は沖縄の根っ子の問題。沖縄ってなに。私たちはどこに向かって進んでいけばよいのかという課題に答えをいただいているから、憧れのスターを見るようなのだが別の感動を受けている。この子達が一人ひとり、スター達と一緒に写真を撮っているから、ご覧の通り誰一人外へ出ない。だから階段に立つ人たちは動けないでいるのだが、皆が笑顔でこのシーンを楽しんでいるのである。
実はロビーで繰り広げられているシーンも舞台の続きなのである。観客と演技者が双方向で心を通わせることによってより一層の満足と親しみを感じ取ることが出来る。
「現代版組踊 肝高の阿麻和利」を、企画したのはうるま市の教育委員会である。不況で苦しんでいる日本(やまと)は、沖縄県から元気を貰うとよい。私は心底からそう思った。
カメラを向けるとV字でポーズをとるのは子どもらしい。学年を聴いたら中学一年生だという。外に出るとここでも子どもたちが踊っていた。
那覇に戻るクルマの中で劇に登場した策士金丸は、泰久国王が亡き後に第二尚家になるのだと教えてもらった。私は帰京したら琉球王朝の歴史を再度勉強しようと思った。那覇で心友夫妻と食事をしながら阿麻和利の話に花が咲いた。翌日は本島の最北端にある奥集落へ行く計画をしていたが、私に急ぎの仕事が入って、翌朝は8時15分の便で戻らなければならなかった。
沖縄は東京よりもはるか西に位置するので、朝7時でもこのように暗い。
那覇空港へ着いたころようやく太陽が昇った。那覇空港へ着陸してから離陸まで18時間の旅であった。私は機内で肝高の子どもたちは誇り高き生き方を選択するに違いないと思った。肝高のスター達よ。私はあなた方からたくさんの元気をいただいた。ありがとう。