ふくらはぎの筋肉が痛いと整骨師に言った。捻挫は患部を固定する包帯が取れ、テーピングも取れた。今まで冷やしたが、これからは暖めると言う。そこで私はふくらはぎの筋肉に痛みが残る、歩くと痛い、まだ直っていないと言ったのである。
すると整骨師は、「眉間にしわを寄せてください」と言った。言われた通りにすると、ふくらはぎの痛いところを手で握った。私は痛いと叫んだ。飛び上がるほど痛かった。
「こんどは笑ってご覧なさい」。私は笑った。整骨師は、また同じところを握った。痛くなかった。
「眉間にしわを寄せると、筋肉が硬直するのです。眉間にしわを寄せることは、ストレスか疲労が出ている証拠です。身体が筋肉を硬直させて教えているのです。きっと一日中パソコンの画面とにらめっこをしているのでしょう」
そうであった。ライフワークになるべき仕事の準備で、単行本もその関係なのだが、ここ数ヶ月は休日はゼロで激務が続いていた。いつの間にやら眉間にしわが寄っていたのかもしれない。
うそ!は整骨師をそう呼んだのではない。笑い顔をしたら痛くなかったから、うそ!と口に出たのである。このうそ!は、なぜ!のうそである。
いまでも整骨師のやったことは半信半疑である。いくらでも手加減ができるではないかと思う。笑った瞬間に痛みは取れるものなのか。しかし、笑う門には福来るというのではないか。そういえば「押せば命の泉湧く ワハハ」の浪越道場は事務所のすぐそばにある。
大不況だからと言って眉間にしわを寄せていると身体まで大不況になる。悩んで暮らしても一生。笑って過ごしても一生。どうせなら笑って過ごしましょう。整骨師はこんな話しを教えてくれたのかもしれない。素直になるとまわりは師匠だらけだ。そう考えるとうそ!は。感謝をこめて、うそ!になった。