仕事に忙殺されて駆けぬける歓びを忘れてしまっていた。毎晩、帰宅は22時を過ぎていた。これでは駆けぬけない哀しみだ。今朝は8時にクルマをSSに持ち運んだ。ブレーキランプが1カ所切れていた。ウオッシュ液剤が少ないとアラームがついていた。タイヤの空気がだいぶ漏れていると感じていた。これらをすべてクリアした。車内の汚れをきれいにした。満タンにしてついでに洗車した。クルマはピカピカだ。心が晴れ晴れとしてきた。この週末の一日を使って一人でクルマを飛ばして万座温泉まで行こう。お気に入りのCDを集めて持っていこう。万座温泉までの道順はすべて頭のなかにある。目をつぶっても万座温泉まで行くことができる。そして硫黄ガスが臭う温泉に浸かってこよう。
くさなぎくんが公然わいせつ罪で逮捕されて家宅捜査まで入った。昔なら留置場で一晩泊めてもらって説教されて放免されたようなことが、いまは逮捕だ。いつから日本はこんなにギスギスなあそびのない社会になったのだろう。これを事件としても加害者はいない。被害者もいない。夜中の公園で服を脱いだからと言ってそれが家宅捜査をするほどの犯罪か。くさなぎくんは、おかしくなった社会の被害者。日本社会は思考停止している。養老さんがいうバカの壁なのだ。その先頭を走っているのがテレビとコメンティターだ。マスメディアはくさなぎ容疑者と叫んでいる。マスメディアは情報の垂れ流しで、批判精神のかけらもない。
社会は一斉にくさなぎくんをボイコットし始めている。バカの壁の大臣は、「はらわたが煮え返るような怒りを感じた。最低な人間だ。絶対許せない」とののしった。酒の飲みすぎて酩酊しただけではないか。。そんな経験なら、私だって数えればいくらでも指を折ることができる。民主主義近代国家の大臣が絶対許せないとはどういうことか説明が聴きたいものだ。メディアが権力に対して批判精神を失ったらそれは御用メディアとなる。権力の発言を垂れ流すだけのマスメディア。いまやネットの方がよほど正確な情報を伝えている。
あそびを知らないエリート連中が社会を支配しだしている。五重の塔が風雪に耐え、地震に耐えて倒壊しないのはあそびをもって建築しているからだ。
昔、いまは存在しないNY世界貿易センターツインビルの外壁を登ったスパイダー男が屋上で逮捕された。裁判の判決が奮っている。「罰金1ドル。それに1ヶ月以内に昇っていないツインビルのもう一棟を登ること」。
7時には家を出よう。10時には万座温泉到着だ。ここは標高が高いから新緑はまだだろう。それから浅間の麓で絵を描いて暮らしている大島康紀画伯に電話を掛けよう。馬に魅せられ、馬と暮らし、馬の絵ばかりを書いている知友だ。
彼が電話に出たら訪問して馬を愛でよう。不在であったら軽井沢のシェ草間で佐久豚の塩焼きを食べ、草間夫妻とワイン談義をしてこよう。
後一ヶ月経てば軽井沢は写真のように緑に包まれ、また一ヶ月経てば軽井沢は真夏になる。私は楽しくていまから明日のことがワクワクしている。すべて杓子定規に当てられてギスギスした世の中になってしまったのだから、せめて自然に触れることくらいは自由にやりたいと思うのだ。