ジョンレノンが軽井沢へ避暑に来ていたのは有名な話である。夫人の実家の別荘が旧軽井沢にあって、訪ねたのが軽井沢を知るきっかけになった。万平ホテルが定宿で、テラスでロイヤルミルクティを好んで飲んだ話はいまや伝説となっている。当時は今ほどに観光客もなく、軽井沢の住民や別荘居住者はジョンレノンを特別扱いしないで、そっとしておいたのが良かったのかもしれない。
ジョンレノンの軽井沢伝説はもう一つある。それは離山房である。いまはグルメ通りと名前が付いている通りに喫茶店離山房はある。ジョンレノンは旧軽井沢からここまで自転車で足を伸ばして何度か立ち寄ったそうだ。その折に写真撮影を許可したので、写真が動かぬ証拠?となって離山房伝説が生まれた。いわくジョンレノンがサイクルの途中に立ち寄った木立の中の喫茶店である。
7月11日、私は東京からクルマで一緒に来た友を軽井沢駅に見送ってから、離山房にハンドルを切った。夏の夕方は木立の中がひんやりとして心地よい。今日はなぜか珈琲をたくさん飲んだので離山房ではアイスレモンティーを頼んで約束の人を待った。
顧客はすべて観光客である。若い女性のグループが珈琲を頼み、カレーライスを食べて写真を撮って帰る。老いた女主人も慣れたもので写真を撮りましょうかと声をかけてサービスをしている。
ビートルズは私の青春世代よりわずかに遅れてでてきた。ビートルズが解散してから、ジョンレノンはリズムに計算がされていない曲を幾つも作った。私は一枚だけジョンレノンのCDを持っているが、それほど愛好していない。ジョンレノンが作った曲でなければこれほどヒットはしなかったであろうと思いながら聴いている。
それでもジョンレノンの行動が伝説を作り、店を潤し、訪ねてくる観光客を夢に誘っている。それはそれでよいことだと思いながら、駅で別れた友は新幹線に座れたかしらと気にかけるのであった。