ドラゴンクエスト9を終えた。私はドラゴンクエスト1から9まで全シリーズを走破?したことになる。今回はDSに搭載したために十字キーを押す左親指が腱鞘炎のような痛みを伴って終了した。DSの小さな画面、大人にとっては操作しづらい小さなキー、悪い音質、いままでPSの操作しやすいキーと大画面、そしてすぐやまこういちの音楽に慣れていた我々大人にとってはなんとも物足りないゲームになった。DSに搭載したことでドラクエのよさをすべて消してしまった全9シリーズのうち最低の評価である。
評価を一言で言えば「物語の面白さや音楽の美しさを捨てて、IT最優先になってしまった」ことである。映画に当てはめれば分かることで、小さなスクリーンで見るより、大型画面で観たほうが映画は迫力ある。音楽も同じだ。小さなスピーカで聴くより大型スピーカーで聴いたほうが迫力が違う。そんなわけでいままでのように大型TV画面のよさを生かす工夫はなくなった。その分だけ物語りは短調単調で、一つひとつの物語を進行させるための智恵はない。だからもう終わってしまったのかというほどたやすく終わってしまったのである。
私は職業変えを一度もしなかった。その上、錬金釜も必要としなかった。それでもLV(レベル)は44に進んでボスキャラは難なく倒せたし、最後の大ボスもあっけなく倒せた。
音楽家のすぎやまこういちはこれまでドラクエに全エネルギーを注ぎ込んできたようにいい音楽を作った。主人公が悪に滅ぼされて廃墟に入ると物悲しい短調のメロディが流れる。主人公が草原を歩くと軽やかでリズミカルなメロディに変わる。やがてドラクエの音楽はシンフォニーになる。今回もすぎやまこういちの音楽を楽しみにしていたが、DSの音では実にがっかりだ。すぎやまこういちの音楽に載せた遠大な物語を、田舎の場末にある映画館で観たようなつまらなさが残った。
IT優先はDSの赤外線ネットワークを使って同時に4人がゲーマーとして参加できるなど、随所に見受けられたが、これまで一人でゲームに没頭した大人が、4人で同じドラクエゲームをやることはない。
きっとスクエアエニックスでも私の指摘に同調する人はいると思う。社内評価は割れていると思う。すぎやまこういち氏も私の意見に肩を持つと思う。
次のドラクエ、つまりドラクエ10は任天堂のWiiに載せるらしい。私はWiiに乗せて発売しているドラクエ番外バージョンで遊んだことがあるが、キャラを歩かせることがむずかしくすぐに放り出した覚えがある。Wiiでも十字キーはあるので、バーを振り回さなくても出来るようにするかもしれないが、スクエアエニックスの経営者は、ビジネスの本質を忘れている。DSが圧倒的な台数を販売しているからこそ、ドラクエの面白さを捨ててまで小画面、音質の悪いDSに搭載することを決めたのだろうが、ドラクエの面白さは物語や音楽だけでなく、どのような装置を使ってこれを楽しむかに掛かっていることを忘れてしまっている。コンテンツは同じでも表現方法を捨ててしまえば、それでコンテンツも死ぬことが分からなかったのであろう。
私にとってのドラクエは8で終わった。9は私にとっては最後に観たドラクエの夢物語で、単なるノスタルジアに過ぎないものであった。私にとってのドラクエはこれでお終いだ。