軽井沢の星野リゾートがハルニレテラスを今年の7月に開業した。ハルニレテラスは星野温泉トンボの湯、星のや(高級リゾート宿泊施設)を中核とした温泉に、新しい感覚をもった温泉街としてスタートした。
鈴木美津子さんの講演があった日、クルマでは帰省混雑に巻き込まれると判断して9日の朝起きると、すぐに家を飛び出して大宮駅から10時14分発の長野新幹線に乗った。それから37分後に私は軽井沢の駅に降り立っていた。そしてしなの鉄道で、5分後には中軽井沢駅にいた。なんとも早いことか。
講演会は14時から軽井沢中央公民館で始まる。今は11時5分だ。私はタクシーに乗ってハルニレテラスへ向かった。この家のデザインは星野リゾートに共通したものである。杉板を黒く塗って木製サッシの窓枠は塗らずに浮き立つようにしている。
もともと生えていたハルニレの樹の周りに南洋材の硬い樹でデッキを作って各店をつないだ新温泉街は古びた温泉街で温泉饅頭を販売しているイメージを持ったものには仰天するだろう。ここには軽井沢の名店が軒を並べているのである。
ここにはフレンチ、イタリアン、そば、天然酵母パン、ジェラード、中華料理などさまざまな飲食店からマッサージ、木製品など各店が出店している。
千が滝通りには上からも下からもハルニレテラスに入りたいクルマが並んでいるのだが、駐車場が満車で入れない状態が続いている。駐車場能力が来場数を決めるわけで、駐車場対策が急務であろうと私は思った。
前日、軽井沢の知友から届いた残暑見舞はがきに、ハルニレテラスのジェラードがお薦めですと書いてあったので少しだけ食してみようと思った。私はミルクアイスクリームに木苺と杏のミックスを注文した。濃厚なミルク味が口の中に広がった。
14時まで時間はたっぷりある。私はハルニレテラスからトンボの湯に向かった。これまで温泉の質などわからなかったが、ほったらかしの湯と、トンボの湯と比較をして違いがわかった。
トンボの湯は名湯である。温泉が肌になじんで高質なカシミアやビキューナに包まれた感じになる。一方、悪い泉質だと荒い麻布にまとわりつかれたようで肌になじまない。知友の話では温泉博士から草津温泉と星野温泉は日本名湯三本に入るという。トンボの湯に続く道は木屑を固めたような道であった。右には清冽な湯川が音を立てて流れている。
散策路を歩くと正面にトンボの湯が見えてきた。入浴客は20名といなかった。私は露天風呂で体の芯まで暖めた。トンボの湯は1年ぶりであった。確認するほどにここは名湯である。
あれから何回も軽井沢を訪ねているのになぜにトンボの湯をパスしていたのか。なんとももったいないことをしていたと思いながら入浴していた。それほどまでにいい湯であった。