3月末に脱稿した原稿が校正時期を迎えている。出版は11月初旬の予定である。いまは出版不況で本が売れない。インターネットの普及で情報は即座に無料で入手できる時代になった。ビジネス書は特に売れず、売れているのは30代までを対象にした個人スキルをアップルするものに限られている。40代以上のビジネスマンと経営者は本を読まないと言われている。
自費出版した本が書店に並んでいないと出版社を相手にした訴訟が一時期はやったが、当たり前の話なのだ。本を選ぶのは書店の権利。毎日平均150種類の本が、販社から届く。店長はそれを選別し売れそうな本だけを書棚に並べる。売れそうもない本は販社に即日返本する。書棚の面積は限られている。
大きな出版社には営業部門があって、書店との関係が構築されている。だから出版社単位で一定の面積が確保されている。
知り合いの編集者に聞くと、自薦他薦いろいろと原稿は持ち込まれるが、ほとんどお断りしているという。自己表現したい筆者と、売れるかどうかを判別する出版社、そして書店での選別、最後に購入者による選別と、いくつもの選別が行われて本は売れる。
知り合いのコンサルタントから電話が入った。初めて書いたビジネス向け原稿を出版社に持ち込んだら6000部のうち4000部を買い取ってくれるなら出すといわれて頭にきた。どこか出してくれるところを紹介してくれないかという内容であった。すぐに編集者に聴いてあげたが丁寧に断られた。もっともな理由であった。
さて、本は4月末の編集会議で通り、5月末の営業会議で了承されて出版が決定した。6月から8月にかけて編集者と内容を再検討する作業があった。編集者は幾冊もの本を抱えているから専従にはならない。売れる本にするために、厳しい意見が出る。「この事例は説得力が乏しいから別の事例に変えてください」などとはやさしいほうだ。「この文章は第三章に持っていく!。ここは重複しているからカットする。ここは専門的過ぎて専門外の人にはわかりづらいから分かるように書き直して!。ここは説明不足などと、ほとんど喧嘩状態が続く。極めつけは、300ページを超える分厚い本になってしまうので240ページくらいにしたいがどう思うか。了解なら削った原稿を再提出して!!!とこんな風だ。
理由は分かっている。時代の変わり目にあって、私は散っている一葉を見て天下の秋を論じているからだ。私が掴んだ1のヒントで、これからの経営はこうしなければならないと100を語っているからだ。どうしてもあいまいな部分が生じる。編集者はそのあいまいさを否定する。誰のためにもならないからだ。そして編集者は原稿の価値を分かっているから、足りないところを補おうと鬼編集者に化している。
そうやって2ヶ月、今日は第二校正を行う日だ。もう喧嘩はない。穏やかにしなやかに仕事は進む。まだタイトルは決まっていない。私のイメージは『今後を生き抜く新経営パラダイム』ハードカバーになる。こうしてブログを書いている間に編集者から電話が入った。「11月2日に発行が決まりました」。編集者のにこやかな笑顔が浮かんだ。私の原稿をいつも二つ返事で引き受けてくれている「編集者Y氏」に深い感謝をしながら、私は事務所会議室で校正原稿に向かっている。
追伸
編集部案としてのタイトルが決まった。
「危機の時代」を生き抜く新・経営パラダイム
サブタイトルは、 -「カスタマープリンシプル」が、売上と利益を持続させる- PHP研究所
このタイトル案で編集部は営業部に廻す。営業部でOKを出せばこれで決定だ。10月初旬に第三校正が出来上がる。それが終わってあとは11月2日の出版日を待つだけになる。