奄美大島大和村にある大棚小中学校の校長と全校生徒の一人ひとりから贈り物をいただいた。この写真も私に送ってくださった宝物である。
大棚集落は西をさんご礁の海、東に深い森を持つ美しい集落である。前の海は東シナ海。海のはるか向こうには中国がある。太陽は山から昇って海に沈む。この森には清澄な川が流れ、今は、南西諸島ではここにしか棲まないりゅうきゅうあゆ(琉球鮎)がいる。奄美大島は東洋のガラパゴスとも言われ、世界でこの島にしか棲まない鳥や、両生類などがいて、こどもたちはこうした大自然の中で、実にこどもらしく育っている。集落はわずかな平地にあってその中央に大棚小中学校がある。
鹿児島から赴任している美術の先生は三校を掛け持ちで子供たちに絵を教えている。絵画のお披露目式で美術の先生は美術教師の立場からこどもたちに作者の紹介や絵の特長を時間をかけて丁寧にやさしく説明をしていただいたと校長は、話をしている。
絵のタイトルは「緑のパドック」である。パドックとはPaddockで牧草地のことである。ここでは競馬場の近くにあるパドックを指す。美術の先生はイギリスの競馬場の話、人々の服装の話、遠近法の話、筆の使い方、色の使い方など多岐にわたって説明をしたので子供たちはとてもよく理解したという。
小・中学校の全員から上記の御礼レターが届いた。一番上の子は小学校一年生。塗り絵に丁寧に色を売り「私もみどりのぱどっく」にいきたいと思ったと感想を書いている。
都会の子供たちなら美術館は近くにあって、親にその意思があるなら子供たちは優れた絵画に触れることができるが、島には才能がある子でも絵に触れる機会がない。ほかにもいろいろな描き方があるんだよと教えたいのだが、そうなると私は奄美大島に美術館を作るしかない。
行政は奄美群島を振興「奄振」するために多額のお金を注ぎ込んで、渋滞をなくすために海の上に橋をかけてバイパス道路を作るとか、トンネルを作って行き来をよくするとか、市民が全員集まってもまだ余裕のあるほど広大な面積を持つスポーツ施設などのいわゆる道路・箱物行政に浪費に近い出費を続けてきた。私は世界で奄美しかない自然や文化を世界に発信することと、そしてこどもたちの教育に力を注ぐことが本当の「奄振」ではないかと思っている。
こうしてこどもたちから心温まる手紙をいただくと私は何にも増してうれしい気持ちになる。リタイヤしたら奄美大島の小中学校に絵画を贈る透明性高い非営利団体を立ち上げて寄付を仰いでオークションで適切な絵画を選んで学校に寄贈する活動を活発にしたいと思っている。今はその活動を行うためのプレ活動だ。少しでも実績があれば本番に入りやすいからだ。
こどもたちにふさわしい絵がオークションに出たら落札して、寄付金額までHPにアップし、あなたの名前であなたの出身校に寄贈しますと募集をしようとも思っている。こうした穏やかな気持ちになれるこのことが、奄美のこどもたちからいただいた真の贈り物なのである。