寒い日の桜は美しく感じないことを初めて知った。人間は飢えや寒さから身を守るための防御は幾重にも出来上がっている。満開の桜が美しく感じないのは身を守る防御本能が働いているからだ。美しさを愛でるよりも寒い方に気をとられるのは優先順位が高いからだ。人間の体はよくできている。今年は寒くて花見どころではないというのは本能が言わせているのである。
けれども桜のほうは人間のそんな本能の働きなどお構い無しに咲いて、強い風と雨に当たりうすぼけながら花の命を終わろうとしている。
閉塞した日本。敗戦から65年しか経っていないもの。民が主など長い歴史で経験したことは一度もないもの。 日本人は志も情熱もどこかへ忘れてしまった。
私はいま新しい会社設立の準備に追われている。ホームページの原稿を書いているが会社の準備と関連しているので遅遅として原稿が進まない。15日が原稿納品の締め日だ。
桜を見ても美しいと感じないのは仕事が進まないからだ。今度の週末にはまだ原稿執筆であろう。軽井沢の鈴木美津子さんから今年はいつまでも天候が悪くて木の移植が進まないと電話が入った。皆が、予定を狂わしている。
海外で利益を上げている日本の会社が利益を日本に持って来れないらしい。理由は簡単。法人税が40%海外はその半分。税金が違う。そこで国は税金をかけないようにして資金還流を狙ったがそれでも日本に持ってこない。国内に投資先がないのがその理由らしい。
日本人は漂流している。誰も根っこを持っていない。風に吹かれて流されているようだ。坂本竜馬も出てこない。鞍馬天狗も出てこない。お助けマンは出てこない。政治家も官僚も国民も国を食い物にしている。桜がこれほどに冷え冷えとした春は初めてだ。
桜は暖かい頃に咲くほうが良い。閉塞感がないときに咲くほうが良い。仕事に追われていない時期に満開になるほうが良い。浮かれている時に咲くのが良い。将来が明るい時代の入学式に咲く桜が良い。ぽかぽかとした霞に覆われた時の桜が良い。良いのに決まっている。
今年の桜は凍って咲いている。春よ来い。早く来い。