GWを一日も休まず仕事に明け暮れていた私は、土日も出勤せざるを得なくなると覚悟した時、片方でこれはまずいと思いはじめた。仕事ばかり続けていると脳が偏ってくる。脳をだますには別のことをやらなければいけない。それが遊びの本質だ。私は8日の土曜日に夜中の一時過ぎまで仕事をやって日曜日を空けた。家に戻ったのが午前2時過ぎ。頭は冴えて眠れないので家では飲まない酒を飲んだ。CDを聞きながらだ、頭はますます冴え渡り午前4時になった。もう眠らないと軽井沢へはいけなくなる。案の定、おきても酒が残っている。このままなら飲酒運転だ。
結局家を出たのは日曜日の11時を回っていた。ネットで道路は渋滞していないことはわかっていたので1時になる前には着くと予想していた。その通りになった。
着いてから知友と連絡をとって、まずは一緒に昼食となった。いつものそば屋は、しだれ桜が満開であった。
足元にはこんな花が咲いていた。
知友はヴォーリズを見に行きませんかといった。一瞬、K教授との約束が思いよぎったが、そうですねと返事をした。日和もよかった。タリアセンの睡鳩荘もよいだろうと思った。
ヴォーリズは日本で600軒くらいを設計したそうだ。軽井沢の別荘はヴォーリズの仕事が多い。旧軽井沢にはヴォーリズ通りがある。ヴォーリズはメンソレタームの近江兄弟を設立した人でもあり、オルガンを日本に普及させた人でもあり教会をたくさん作った人でもある。
朝水さんの別荘であったこの家は当初は旧軽井沢、二見橋の上手にあったものをタリアセンに移築したものである。
2階に上がろうとすると女性が出てきてそこから先は別料金ですと言った。おいおい。ここに入るのに入場料800円も払っているのだぞ。「そこから先は別料金」ってまるで○○と言いかけておかしくなって笑った。ナショナルトラスト展をやっているのです。だから200円です。やっていなかったらお金はいりませんがやっていますので200円ですと言った。私がナショナルトラスト展は見ないから無料にならないのと言ったら、即座にだめですといわれた。800円はタリアセンの入場料であってここの入場料ではありません。女性はバチリといった。
でも800円の入場料には睡鳩荘の入場料金が含まれていますよねと言ったら、女性は200円を払っていただかないと2階には上がれませんと厳しい。あ!そうか。お金がないから寄付をしてくれって言う事なの?。でも200円はあなたの人件費に消えてしまうのではないの?とまでは言わずに200円を払った。
2階はこのような部屋が合計で3部屋あるだけなのだが、どこがナショナルトラスト展なのか。まったく分からなかった。さっきの女性、もう消えてしまって、下にはいないのではないのと思ったが、居た。
睡鳩荘2階ベランダから見るタリアセンは美しい。睡鳩荘は旧軽井沢から日当たりの良いタリアセンに移築されて良かった。
塩沢湖はボート遊びには絶好の場所だ。ここには軽井沢をこよなく愛した画家深沢紅子(こうこ)の野の花美術館がある。私は深沢紅子の手業が好きで、特に女性を描いた水彩画はよい。自分の部屋に飾って眺めているには絶品だと思う。野の花の絵は時折オークションに出るけれど、女性像はモデルの家族や子孫が手放さないのだろう。入手できない。
タリアセンには、堀辰雄の別荘や作家有島武郎が波多野秋子と情死を遂げた別荘〈浄月荘)も移築して保存されている。
堀辰雄の夫人は今年4月に老衰で無くなった。享年96歳である。追分で一人暮らしをしていて最近まで軽井沢の雑誌に良く登場していた。身の回りに結核患者が幾人もおりましたので堀が結核である事を結婚前に聞かされておりましたがいやだということはありませんでしたと笑顔で語っていた。
有島武郎はカインの末裔や、或る女、童話一房の葡萄などで知られた作家である。梅雨時の心中で死後1ヶ月以上も発見されなかったがため腐乱して遺書から有島と判別したという話はあまりにも有名である。いまは改装されて一房の葡萄という喫茶になっている。
それから私たちは室生犀星の別荘を見て、ついでに天皇、皇后陛下の軽井沢の恋で有名になったテニスコート周辺を散策した。
帰路は大渋滞であった。考えて見れば6日、7日を休めば今日はGWの最終日に当たる。これは混むはずだ。おまけに追突事故が二件もあった。帰りは遅くなってしまったがおかげで脳は白紙に戻った。