毎年いまごろになると喪中のハガキが届く。私は喪中のハガキが届くたびに腑に落ちないことがあった。それは次のところだ。
「喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます」。
喪中なので年賀状を出すのは遠慮してくださいと申し上げているのか、自分が年賀状を差し上げるのは喪中なので致しませんと書いているのか腑に落ちないのだ。
私の中学・高校時代に大変お世話になり、多大な影響を受け、いまも交流をしている文学の恩師から一通のはがきが届いた。
新年のご挨拶にかえて
皆様にはおかわりございませんか
妻 ○○が、6月15日に永眠いたしました
新年のご挨拶は失礼させていただきますが、
年賀状の全くないお正月はさびしいので
皆様の年賀状はいつものように
楽しみにしております
これからも寒さが厳しくなる折から
どうぞご自愛のほどお祈り申し上げます
平成22年11月
私はかつて師の書斎が殺風景なので油彩画をお贈りしたことがあるが、ハガキには、妻は10年近く病魔と闘ってきましたがついに命尽きました。それまでよく、ご恵送頂いた絵画を眺め、心慰められておりました。有難うございました。と、御礼の便りが記されていた。