春日通りは東京を基点に南北に走っている道である。文京区春日はわが事務所の所在地である。春日局の所領地だった場所なのでここら辺は春日通りと名が付いている。伝通院前を南に下がると、本郷三丁目から湯島を抜けて上野広小路に達し御徒町駅から昭和通りに抜ける。一方、北上をして池袋を越すと川越街道と名前を変える。川越街道は川越までの道だが、国道17号中仙道とつながり上州高崎の方へ行く。藤岡で長野方面に向かう道と新潟方面に向かう三叉路になる。
関東平野の北側にある山々は白雪に覆われている。遠くシベリアから降りてくる寒気団が日本海の水分を含んで関東平野のはずれにある山々にぶつかって雪を降らし、乾いた冷風が関東地方を襲ってくる。中仙道、川越街道、春日通りは障害物がない北風の通り道になっている。
伝通院交差点から後楽園駅まで春日通りを歩く私は、夜風に冷気をまともに浴びるわけだが、ふと奄美大島では緋寒桜が蕾をふくらましていることだろうと南の島へ心を寄せることがある。
ようやく執筆に終止符を打つときが来た。まだいくつかのプロセスは残っているが、うれしくもなくうれしくもなくもなく、安堵もなく、もう次の仕事に没頭をしている。どこかに時間を組み込んで残りをやらなければいけないが、執筆は集中する対象ではなくなっている。来週月曜日は我が社で企画したセミナーがあって、2時間の講演内容を週末でまとめる作業があるし、そのあと我が社にとっての新製品を発表するための準備がある。時間と一緒に仕事も進み、仕事と一緒に時間も進む。
私の誕生日が近づくと、南の島では春を告げる緋寒桜が咲いている。私にとっては緋寒桜が咲く頃は私を生んで育ててくれた両親を思い出す時でもあるのだ。