追分測候所の発表では気温が-17.9度だそうだ。追分とは江戸時代に軽井沢の二つ先の宿で、今は軽井沢町に属する。民謡、小諸追分でちょっとは知られている地域だ。
2009年は、2月にはノーマルタイヤで軽井沢へ行き、日本ロマンチック街道を抜けて北軽井沢まで行けたものだが、今年はそうはいかない。友人のFacebookには、雪に埋もれた別荘地に行くと狐が人に寄ってくると写真入りでUPしていたが、野生動物が人に寄ってくるのは、よほどの空腹なんだろう。冬は食べ物がなくなるから、冬を耐え抜く生き物は厳しい生き方を迫られる。
私が仕事を終えて東京メトロの駅に行くには川越街道(春日通り)を南に向かうことになる。川越街道は南北に走っているから北風の通り道になる。川越方面から吹く北風は、今年はことのほか強く冷たい。
駅に行くために抜ける公園には、家のない人が寝泊りしている。彼は公園を照らす街灯の下で、姿勢を正して本を読んでいる。彼の寝床はゴミ集積場の壁にさえぎられた場所である。私はホームレスにどのような救済施設があるのか知らない。他の選択肢もある中で彼はここを選択し、自己責任で生きているのだから、私はここに口を挟む気はない。この時、私は野の生き物と同じように、人間も冬は厳しい生き方を迫られていると思った。
問題はどこにもない。追分測候所が示すとおり、大寒波が大陸から押し寄せてきているだけのことだ。この寒さが雪を積もらせ、やがてこの雪は地下水になり、春に雪解け水となって大地に恵みを与える。その一過程だ。
メディアは豪雪を悪しき事件のような扱いで報じるが、私は夜更けに寒波で身を縮めながらも帰宅への道すがら別のことを考えている。
雪
三好達治
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
二郎を眠らせ、二郎の屋根に雪ふりつむ
雪
雪
三好達治
太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
二郎をねむらせ、二郎の屋根に雪ふりつむ。