GWは一日だけ休みを取るがあとはすべて仕事の予定が入っている。やるべきことを書き込んだ付箋は、30枚近く、作業が終わって外されるのを待っている。
311のあと、iPadと顧客政策をつなげた世の中にまったくないCRM構想を思い立った。それからまもなく14ヶ月になる。
いま、この14ヶ月を振り返ると私は【蛹】であった。昆虫の変態と同じで、私は殻に篭って変態を遂げていた。いま、この14ヶ月は一塊になっていて、連続性がない。
この間アポトーシスシステムで、今までの組織を壊し新しい仕組みを整えた。蛹とは、完全変態を遂げるための状態のことである。しかし今までの組織と新しい仕組みはまったく別のものではない。今までの組織にはなかった心臓をつくり、目を作り、行動する手足と判断する脳を作った。私にとっては古い組織体を壊さなければできないことであった。
私に新たな仕組みを作れと命じた遺伝子は、なんであったか。311の直接的な被災者でなくても私の想像力は、私なりに感じたことがあって感じたものが遺伝子に命令を出したのであった。
感じたものとは、あらゆる生命にとって、一瞬だけが存在しているすべてであるという想いである。
これまで私の死生観は、観念的なものであったが、311は、過去にも未来にも縛られずに今を生きるとする死生観にスイッチを押したのである。
蛹になって一塊とは、多くの人と関係性を持たずに閉じこもった状態であることを指す。現実には多くの人と出会い、仕事を一緒にやってきたが私は蛹になったままであった。
創造する時は実に孤独である。毎晩終電車間際までデスクのPCに向かい続けていた。
やがて周辺から理解され始め、システム会社も私の創造した考えに投資をしてくれた。何よりも社内の優秀な頭脳を持つ仲間たちがシステム要件定義をしてくれたのは、心強かった。
私は途中の段階で製薬会社に向けて何度もセミナーを開催した。世界を代表する製薬企業の多くに何度も訪問した。参加者が発するわずかな部分的な感想に敏感に耳を傾け、創造力を駆使して修正を加えた。
こうして初期のバージョンとはまるで別人のようなiPad-CRMができていった。それから親しいデザイナーに依頼して100枚に及ぶ全画面のデザインをプロの手で一新させている。
この仕事は、私の独壇場だ。デザイナーと画面デザインをやり取りして修正を加える。ユーザービリティを最重視する考えは使うシーンも考慮しなければ生まれない。
「顧客の心を動かす不思議なコンテンツ制作」とキャッチフレーズができたマジカルウエポン制作所の新しい複数キャラクターの一人が完成した。
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私は、ようやく創造的破壊をし終えて蛹から羽化しようとしている。我に戻ったと言ってもよい。我に戻ったことで、会いたくても会えなかった人たちと連絡をとり始めた。
開発したiPad-CRMは、世界中にいまだ存在していないものなのですでに大企業と契約が済んだり。たくさんのオファーが続いている。
この14ヶ月間。私は蛹であった。気が付けば5月1日であった。しかも311を基点とすると1年間経過した翌年の5月1日であった。