我がオフィスにM6が入ってきた。560馬力のV8エンジンを持つBMWフラグシップである。どこも改造せず、部品を変えず、このままでサーキットに持ち込めるそうだ。
このクルマを運転して一昨日約600キロの日帰りツーリングに出かけた。
途中の写真は一枚もない。疲れないため休まない。休まないから水分をとらない。だからトイレ休憩がない。したがって旅のショットシーンがないというわけだ。
うれしいことがなくもないが、うれしいこともない。感動がないわけでもないが特別にあるわけでもない。サーキットに持ち込むなんて夢の中の出来事だ。
M6はいつでもどこでも踏めばGを伴った加速をする。そのうえ良く止まるし、よく曲がる。安定感が抜群で恐怖感がまったくない。
そういうところがうれしいのではなく、BMWの経営理念に沿って、寸分とも狂わずつくり上げているところが見つかってそこがとてもうれしい。
むかしあった気持ちは、いまは無い方がうれしい。老いぼれではちょっと困るけど。枯れ果てたのではもっと困るけれど。
本当の探し物を見つけることがうれしい。目では見えないものやことが見つかるのがうれしい。富士山と浅間山の火脈が地下でつながっていると分かるのがうれしい。大自然は地球のことで同時に宇宙のことであり人間などは細菌に張り付いた細菌のような小さな寸法であることをわかるのがうれしい。
細菌に張り付いた細菌の寸法が集まって、戦争をやれる国にするとか、原子力を基礎エネルギーとすると言っていることは、おまけに戦争法を平安法と言い換えることに夢中になっている最近にへばりついた細菌の寸法どもを月に立って様子を窺がうほどに、細菌に張り付いた細菌どものなれの果てが見えるようで哀れに映る。
時折、人間は自然と触れ合わないとダメになるということがわかったことがうれしい。目を開けばどこにでも自然があることが分かってうれしい。
モノやコトは現象に過ぎないことをわかったこともうれしいが、現象とは何ともむずかしい概念であったのかを知ると、知れば知るほどにわからないことが増えてきて、うれしいことがなくもないが、うれしいこともなくなることが困る。
火山脈がつながっているのは富士山と浅間山だけではない。箱根山も伊豆大島も白根山も、ありとあらゆる火山口は一つの火山脈でつながっていると考えるべきなのだ。ネパールのエベレスト付近で起きた地震は大陸が圧縮されてエベレストができたと同じ地殻活動の一環なのだ。
細菌が張り付いた細菌の寸法は、自然を敬い、自然と反することは止めて自然と一体になって共に生きればよいのだ。
こんなことが分かり始めたことがうれしい。老いぼれでは困るけど。枯れ果てたのでは困るけど。