画家の友人から中国土産の茶をいただいた。写真がそれだ。
本体は366グラム。実際に計測してみたがその通りであった。茶葉を押し固めてつくってある。重くて硬い。茶葉のかたまりをペンチで砕いて必要な量だけお茶を取り出す。長期保存に耐えられるつくりである。
壊してしまうのがもったいなくて手を付けていない。そこで、紋章のように飾っているのだが、それも長続きはしないだろう。
日本でのウーロン茶は缶入りやペットボトル入りで販売されている。おいしい中国茶は本当に旨い。日本で販売されているものとは全く別物である。その代り旨い中国茶は価格も高い。
ウーロン茶は中国語では烏龍茶と書く。烏龍はカラスヘビの意味だ。むかし、中国でお茶葉をつくる工場で手もみ作業をしていたら、それはそれは大きなカラスヘビが積み上げている茶葉の中から出てきた。作業員は驚いて逃げ、だれも、作業場に近づかなかった。
数日たって男性作業員が数人でカラスヘビを見つけ外へ追い出した。そのうえで作業場をくまなく探しもうヘビがいなくなるとわかった時点で作業員が戻り、再び、手もみ加工して茶をつくった。ところが茶を飲んでみたところ、味が変わっておいしくなっていた。皆が逃げている間に茶の発酵が進んだのだ。こうして発酵時間を長めてつくる烏龍茶が誕生したわけだ。
何故、昔の中国でカラスヘビが出てきたところで作業員が逃げ出したのか?
そういえば、35歳のころ、北海道積丹半島にある湯治場にグループで宿泊したことを思い出した。雪が残る春先のころである。4人一部屋の8畳間だと思うが、なんと朝目覚めたら大きなシマヘビが誰かの布団の中にいたのである。ギャーと悲鳴があって、その若者は飛び上がった。そしてヘビだ。ヘビだと騒いだ。予想していないことが起きたので、しかも寝起きだったので部屋にいる全員がびっくり仰天した。ヘビも寒くて布団の中に潜り込んできたようだ。
窓を見ると少しだけ空いている。誰かが暖房で部屋が温まりすぎていたので外気を取り入れるために開けたらしい。しかし驚いたのは人間よりもヘビの方であった。筋肉を思い切り使って胸から頭を上げて必死になって逃げ回り、窓の隙間から外へ飛び出していった。
驚いた人間よりもヘビの方がもっと驚いていた。全身が筋肉のかたまりとなって必死で逃げようとしていたその姿からも容易に想像ができる
恐らくこんな風景が昔の中国お茶工場で起きたのかもしれない。茶葉を蒸して手でもんで乾燥させるうちに、長い時間放置したことが幸いして発酵が進み新しいお茶ができたのである。
画家からいただいた中国茶は、ビンテージ物の普洱茶(プーアールチャ)である。
原産地は雲南省である。
中国茶は多種にわたっているがこのプーアール茶は黒茶に属している。
つくり方は複雑で一旦完成した緑茶の茶葉に微生物を加えて発酵させる。これを後発酵茶という。
プーアール茶は何度も飲んでいるので味はよく知っている。
良いものは熟成香が強い。
画家の話では、写真にある一枚の板で27万円くらいになるとか。
元々は画家が自分のファンである中国の富裕層からプレゼントとして積み重ねてある束を受けとったもの。プーアール茶のビンテージ物は高価だということは以前から知っていたものの、口にするのは初めてである。
画家からお茶をいただいた夜、二人で中国人夫婦が営む中国料理店で中国料理の話をした。彼の顧客は中国の富裕層なので、聞く話は面白い。
画家は、毒蛇コブラのスープを飲んだとか、アルマジロを食べてきたとか話していた。人間は使いきれないほどの金を持って使い放題やりたいことをやると、人間としての喜怒哀楽を失い、今まで食べたことのないモノを食べようなんて思うらしい。目の前で生きたコブラを捌くらしいがコブラ料理が約50万円、アルマジロ料理が約150万円くらいとか。
そんな価格を付けても、今まで食べたことがないものを食べたい欲求が生まれ、それがモノの貨幣価値を決めてしまうのだからすごいことだ。
話は、プーアール茶からコブラ料理に移ってしまったが、話を戻そう。画家の友人から中国茶をいただいた話はこれでお終いである。