「生きてると後悔はつきものだけど、後悔と罪悪感を切り離して、いくつかの後悔は大事な思い出とともにしっかり抱いて、誰も悪くないってわかってても抱えてしまう罪悪感は手放してあげようと思えるようになった一年でした。
上の文章は、歌手の宇多田ヒカルがツイートした言葉である。人生を振り返り、葛藤からの解放を宣言した意味深い文である。
この文を読んですぐに思い浮かべたのは、シャンソン「私は決して後悔しない」であった。この曲は1956年、シャルルデュモンが作曲し、ミシェル・ヴォーケルが詞を付けた。
そして1960年エディット・ピアフがリリースし、大ヒットした。
それには、ピアフがフランス人にとって国家的大歌手の一人であっただけでなく、もう一つの理由があった。1949年、最愛の恋人、ボクサーのマルセル・セルダンを航空機事故で失い、失意のどん底に落とされる。翌1950年、ピアフは失意の中にいて、セルダンとの愛の歌を作る。それが今も世界中で歌われているピアフ作詞の「愛の賛歌」である。
しかし翌1951年、交通事故に遭い、ピアフは、痛みから逃げるために鎮痛剤としてモルヒネに救いを求め、終いには深刻なモルヒネ中毒者になる。不眠、幻覚、錯乱、悪夢、手足の震え・・・を起こし、モルヒネ接種をやめると激しい禁断症状を起こす。一度手を付けたら一生やめられないモルヒネ中毒者となったピアフは、1960年、「私は後悔しない」を持って不死鳥のごとく蘇る。
日本では、「水に流して」と訳されたこの歌は、もう後悔しない。すべては水に流す。愛も、何もかも、私が経験したすべてのことを水に流して、ゼロから再出発すると高らかに唄いあげている。
宇多田ヒカルは、後悔は思い出と一緒に大切にし、罪悪感は手放そうとツイートしている。
ピアフは、もう後悔しない。過去はすべて燃やし水に流そう。それだけの代償は支払った。ゼロからやり直すと唄っている。
ちなみに、ピアフはそれから3年後、1963年にガンで死んだ。享年47歳。ピアフが言った有名な言葉、「私は二度生きた」は。ヒントになるか。
ちなみに、私はエディットピアフの大ファン。手元のスマホにはアップル・ミュージックとアマゾン・ミュージックがあって、それぞれ6500万曲を選び出せ、高音質で聴くことができる。エディットピアフのアルバムは全曲ダウンロードして聴いている。
一番好きな曲 群衆