羽田発8時30分。11月の朝はもう肌寒い。私は長袖の肌着に長袖シャツを着てその上にダウンのライナーをつけたブルゾンを着た。それでも風は冷たく、私は震えながら搭乗案内の時間を待った。
奄美大島便はいつもバスで搭乗機に案内される。バスを降りて、あれ?と思った。これまでふるさとに帰る奄美大島の人たちで溢れているはずが今回は様子が変わっていた。若い女性が多い。少しずつ若い女性の観光客が増えている。奄美も観光化してくる。その前ぶれだ。
奄美は知的観光島を目指さなければいけない。南の島が見たい観光客は沖縄へ行けばよい。沖縄の方が揃っているよ。リゾートホテルも観光施設も繁華街も沖縄の方がおもしろいさ。けれども沖縄へ行く人の1割位が奄美の良さを知って奄美へ行くことが良いと思っている。だから若い女性が奄美の何処が好きで訪問するのかが気になってくる。
今日は11月2日。奄美空港は曇り空であったが空港にいる人たちはみな半袖であった。泰さんと田町さんが笑顔で出迎えてくれた。
「服部さん。まずお昼ご飯を食べましょう。おいしい店があるから」3泊4日のガイドをお願いした田町さんは「野のはな」に案内してくれた。クルマを提供して運転手を買って出てくれたのが知友の泰さん。私達の奄美群島の旅が始まった。野のはなの女主人は国山惠子さん。ご主人の退官を契機にして名瀬市から笠利に移り住んで昼食だけのレストランをはじめた。
ご主人が厨房に入って料理を盛り付けている。バイキング形式で次々と手料理がでてくる。すべてが島料理。野菜は全部裏の畑で作ります。惠子さんは私達を畑を案内してくれた。
「EM菌ってすごいわね。せいの高いさとうきびあるでしょ。あそこだけEM菌を使ったのよ。惠子さんは田町さんに呼びかけている。「そうでしょう!EM菌はすごいのよ」田町さんもEM菌のファンのようだ。EM菌を生ゴミに菌をかけることで肥料になってしまう優れものらしい。
惠子さんの畑説明は30分に及んだ。楽しくて仕方がないと言った。なにもかもこれから勉強ですとも言った。開墾されて畑は広がる一方である。
自分の畑で野菜を作り、好きな手料理でお客を喜ばせて、午前11時半に店を開いて午後3時には店を閉めてしまう生活はとてもシンプルだ。毎日が楽しくて仕方がないという惠子さん。これも豊かな島暮らしの一パターンである。