この週末は楽しみだ。土曜日は建築家と、家の様式をエモーション軸で区分けして整理する仕事を手伝う。建て主は建てたいイメージをもやもやと口頭で語る。建築家はそれを具現化するのだから大変だ。だからそのスケール作りを一緒にやることになったのである。
日曜日は早朝からクルマで軽井沢へ向かう。北軽井沢へ出かけて知人と会い、それから浅間山を時計回りとは反対にぐるりと回るコースを取って小諸市の山奥に入る。北軽井沢から18号まで戻って追分の先を浅間サンラインを抜ければコースは安心だが、私は戻らず北軽井沢をさらに直進して突き当りを左折し、浅間山を回り込むようにして、それから一気に高峰高原にたどり着く。ここは標高2000メートルだ。そして九十九折の山道を1000メートルほど垂直落下のように下りて、再び林道を登って水石集落を目指す。この運転は楽しいだろうなとワクワクしている。私のクルマはNAVIが故障している。液晶が寿命というのだ。液晶を交換しないとNAVIが使えない。もともとNAVIに頼らないからNAVIが無くてもよいのだが、山道を走ってどこにあるか見当がつかない遠い集落までたどり着けるのか。方向だって分からない。不安でないと言えば強がりになるが、だからと言って18号を西に向かっても面白くない。
人がいたら聴こう。これしかたどり着くことはできない。しかし田舎の人は道を教えることは下手だ。「この位置をまっすぐ行けばいい」言われたとおりまっすぐ行くと三叉路が幾つもある。右か左か。どちらもまっすぐだ。そんなことは田舎で道を尋ねれば日常のことだ。
水石集落には若いころ一緒に良く遊んだ画家が家族と馬と暮らしている。その彼に会いに行く。
北軽井沢へはどのコースをたどろうか。三笠通りから抜ける道と、千が滝通りから抜ける道がある。三笠通りは三笠ホテルがある。日本政治の舞台として使われた有名なホテルで国の重要無形文化財になっている。このホテルを右手に見ながら落葉松並木を北進する。この道は走っていて面白い。新緑が美しい頃だ。白糸の滝は三笠通りを直進した右手にある。この道が千が滝通りよりよほど楽しいからこの道に決めよう。
北軽井沢は鬼押し出しの先にある。鬼押し出しの駐車場で午前10時に待ち合わせだ。それから再びクルマで知友の農園を訪れる。話し込むから2時間はかかるだろう。かつて浅間の大噴火で三つの集落が溶岩に埋もれた。それが鬼押し出しだ。ここを左に見て北軽井沢をさらに北上する。
そして浅間山を回って高峰高原から画家の家を訪ねるのだ。古い民家を買って手作りで修理をしたという。それに馬を飼っているからほとんど酪農家のような暮らしをしているだろう。彼のhpを見ると勇ましく馬上に座す画家の写真が貼ってある。もう電話で行く約束を交わしている。画家は今日来てと言った。いますぐ来てくれと言った。今日が無理なら明日来てくれと言った。昔、好きな人に言った言葉のようだ。彼も私の訪問を待ち望んでいる。
どこかで昼食をしていかなければいけない。農園を出てからそばでも食べよう。日帰り軽井沢コースはいつも走行距離は400キロ平均だから、浅間山を回りこむコースとたどれば全走行距離500キロメートルは軽く超えるだろう。前日に入った方が楽かもしれない。月曜日の早朝に軽井沢を出れば9時半には出勤できるかもしれない。そんなことを考えながらいる。
人に会えるからうれしい。30年以上も会っていない人だからうれしい。