ショパンのノクターン20番をアレンジした平原綾香の「ノクターン・カンパニューラの恋」を聴いた。2008年フジテレビ開局50周年記念番組としてつくられた、「風のガーデン」主題歌である。
椎名邦仁のアレンジが上手い。平原綾香の熱唱もいい。逝った人への哀しみと生き残った人への祈りを謳い上げている。
レクイエムは日本では鎮魂歌と訳されているが、鎮魂とは怨霊の魂を鎮めるという意味だそうで、正しい使い方ではない。レクイエムは死者の安息を神に願う聖歌であり、適切な日本語がないために鎮魂歌と訳されたのであろう。鎮魂の鎮(ちん)は文鎮の鎮で、押さえつけるという意味を持つ。怨霊を押さえつけるが鎮魂の正しい意味である。
ショパン20番と言えば必ず遺作となって表現されているのだが、ショパンが死んだのが1849年、この作品は1830年につくられている。ショパンは1810年生まれだから、1830年とは20歳の作品だ。20歳の作品がなぜ遺作なのか分からなかった。
よく調べるとショパンは公表していない作品がたくさんあってノクターン20番もこの中の一つであった。そして死後に、出版社が公表していない作品を次々と出版した。ところが作品通し番号がないために、すべてが遺作として分類していたことが分かった。20番はノクターンに分類された。
20番を、ノクターンに分類したのは後世の人たちであり、本人はそう思っていなかったわけである。
それにしても20歳で哀愁を込めた美しい旋律をつくったものだとショパンの才能に驚き、特に20番はマイカーのHDにも積んであるし、Youtubeで検索して出てくる演奏家の作品を聴いて解釈の違いを楽しんでいる。
平原綾香は、ホリストの惑星からジュピターを唄っている。私は選曲が良くないと思っていた。彼女は高音がいい。ジュピターは低音から入るので誰が聴いてもよいとは思えない。
20番を聴きたいとyoutubeを探していたら平原綾香に出会い、すぐにジュピターを連想したので、大したことはないだろうと思いながら聴いた。
ところが「ノクターン・カンパニュラの恋」はよかった。彼女は、高音がいい。NHK BSで平原綾香のコンサートが放映されたか、その時に唄ったノクターンがyoutubeアップされている。この歌はピアノの伴奏が良い。奏者の技術が高い。マイクもいい。平山綾香はさぞかし、心を注入できたのであろう。絶唱に近い。
ショパンの20番は「戦場のピアニスト」の主題音楽にもなった。とてつもなく美しい旋律でそれにも増して憂いを持っているこの曲を日本人は好きだ。
私はこの曲が遺作であると信じ切っていたので、ショパンの人生に重ね合わせて聴いていたが、20歳の作品と知って、音楽が持つ聴く人への心の揺さぶり力を改めて感じ入ったのである。