台風は日本列島に恵みの水をもたらす。もたらすを漢字で書くと「齎す」と書く。神がかった文字だ。
私たちは台風の被害ばかりを恐れるが、水がない国から見れば、水を大量に運んでくれる台風が来ることは何ともうらやましい限りだろう。
今年の春、首都圏は水不足に悩まされた。しかし秋になれば台風のおかげで貯水湖は満杯に戻る。
日本は梅雨があり、秋雨がある。そして台風がある。高山には雪が積もり、春には雪解け水が田畑を潤す。日本はいつでも水に恵まれている。
日本は場所によって多彩な自然の姿を見せる。流氷が流れ着く北海道の風景。透明な海とサンゴ礁がある南西諸島の海。列島の中央にある富士山。この島に住む人は豊かな自然の中で自然を敬い、生きている。この島が豊かな自然に恵まれているベースとなるものは水である。水が豊かになければ美しい自然は成り立たない。
台風27号、28号がくる。人は自然に勝てるわけがないのだから、逆らわずに従うだけだ。自然とは宇宙の活動なのだ。人間の英知を使って逆らうことはできない。東北地方の防潮堤建設も、この観点からは愚の骨頂というものだ。
台風を恐れるのではなく、台風を喜ぼう。台風は突然には来ない。事前に到達時刻や強さが分かっているのだから、防災行動をとることができる。日本の水計画は台風が来ることを想定している。
私は半徹夜が二日続いて、どこかで自然に触れておきたい気持ちが高ぶっている。だから台風を喜ぼうと思うのかもしれない。台風27号がどう動くのかはわからないが、日曜日、もしも台風一過なら信州の標高1000メートルの山脈をドライブしよう。きっと抜けるような青空の下で燃えるような紅葉に出会えるだろう。