まだ旅の途中だ。うしろから何かが追いかけてくる。私を失明に追い込もうとする目の妖精かも知れず、気力を妨げようとする音楽の妖精かもしれない。私は逃げるために必死になって筋肉を鍛えている。
仕事は山ほどあり、山を崩すとまた新しい山が襲い来る。私はまだ旅の途中だ。何かが私を追いかけてくる。
今日は早朝に起きて大学病院眼科に出かけた。硝子体に出血した血液は案外早く引いてくれた。オフィスに戻っても瞳孔を開いた麻酔薬は消えていない。ひと時休んで目の休息を待ってそれから執筆に入った。毎週発行しているメールマガジンの原稿は約4000字で終わった。それから奄美大島の泰さんと話をした。泰さんはタンカンを送ってくれた。その御礼を伝える電話をしたのである。
それから北海道の広尾町に電話を入れた。友人の安否を尋ねることが目的だ。
ついでに、泰さんへのお返しに、広尾の襟裳岬沖で取れる鮭を送ってもらうように水産会社の社長に依頼した。
それからいつ降ってもおかしくない空を仰ぎながら、庭に出て満開の椿を愛でた。
今年の誕生日が過ぎて78歳になった。まだ旅の途中である。
年末に購入したBMWグランクーペだけど、肝心の自動車免許証を返納した。目がことのほか悪く運転に差支えが出ると判断した結果である。このアクションはこたえた。大好きなドライブがいけなくなった。しかし代わりに孫娘が自動車教習所に通いだした。
私はクルマに変わる換わりを見つけなければならない。旅だろうな。
どんな旅だろうか。旅行か、思い出の旅か。音楽にまつわる思い出の旅か。いや、新しい思い出をつくるたびに出かけよう。来月になったら小淵沢経由で小海線にのり小諸へ出て小諸市の山奥に住む知友と酒を飲み交わし、帰路は翌日は軽井沢へ出て、新幹線で帰京する旅もいいな。もしくは貯まりに溜まっている航空機のマイレージを使って沖縄と奄美大島の旅もいいな。沖縄は首里の町を知友と歩きたいなあ。奄美に行ったら大勢の知友が集まるだろうなと期待を膨らましている。
まだ、私は旅の途中にいる。病は追いかけてくるがReaperはまだついてこない。