オフィスにある絵を、入れ替えようと思い立って、すぐに行動に移した。
第一便は、本日届き、替える絵と交替した。
深澤孝哉画伯の半抽象画「サンマリ」である。
深澤さんは白日会の副会長を務めた人で、いくつかの美術館にも買い収められている。
ネットで調べたが、多くは具象画で、半抽象はネットでは出てこなかった。サイズは6号である。
私が好きな画家、木村忠太画伯が全盛期のころを彷彿させる色彩感覚と力強さが気に入って速攻で入札し落札した。取り扱う画廊の亭主は誠実な人で、気分良く手に入れることができた。
良い絵を手にすることはとても楽しいことだ。
宅配便で届いて、すぐに開梱し、壁に掛けて、壁に掛け、紐の長さを調整して、じっくり眺めて、いいな、いい絵だなと思いつつ、執筆中の原稿を進めるため、PCに向かったものの、また絵のことが気になって、席を立って絵に向きあうことを二度もそわそわと繰り返した。
すると、他の絵との比較が私の脳内で始まる。
脳はオフィスにある約20枚の絵と、勝手に比較をし始め、優劣の序列をつけて私に返してくるのだ。
脳の働きかけは、予知していたので、最大5枚の絵が掛け外しの対象になると想定し、目下5点の油彩画を入札している。すべてを落札するわけではない。絵のレベルが重要なのである。
この絵を交替する前までは、すべての絵がそれぞれ同じレベルであったのだろう。陳列して違和感がなかったが、たった一つの絵を入れ替えたことでバランスが壊れ、脳は次のバランスを求めて比較をし、弾きだす絵を選択するのである。
そのデータは私が過去から今日までの絵画遍歴による。
私は、大したことはなく、ぼんくらで陳腐なコレクターに過ぎなのだが、なまじ足を突っ込んだがために脳が勝手に動き出すのである。
この動作は、AIの内、深層学習の動きと似ている。
壁下に移された絵は取り残されているわけではない。見る人の目線が変わっただけである。