荒井由実(結婚して松任谷由実)と、僕とは11歳違い。僕が1943 年。彼女は1954年だから同世代とは言わないが人生の主要な部分を並行して生きていることになる。
初めて聴いたのは、1973年ファーストアルバム「ひこうき雲」。彼女が19歳で、僕が30歳の時だ。それまでに僕の音楽と言えば、中高校生の吹奏楽部と、ハワイアンバンドをつくっのウクレレ演奏とボーカルくらいなもので、時代背景としては、山口百恵、沢田研二、ピンクレディ、小柳ルミ子、野口五郎等が黄金期であった。
忽然と現れた彼女のファーストアルバムひこうき雲は、衝撃と言わないで何と言えばよいのか。人生の一コマをタイムスライスし、光り輝く言葉を与えて、だれもつくれない詩をつくって、そのうえだれもまねできないコード進行で、既存のコード進行を無視したメロディをかぶせた、品性ある曲は、言葉も活き活き、メロディも生き生きで、新しい時空間をつくりあげた。僕は一瞬にして、心をわしづかみにされってしまたのである。
彼女自身が言うように、まったく新しい音楽であったから、彼女の特別なセンスに気づいた音楽家たちが集まって、中でもキャラメル・ママ等は、何とかしてデビューさせたいと夢中になった。キャラメル・ママのメンバーは今や伝説的なところまで行き着いていて、この先は神話になってしまうのだあ。細野晴臣、松任谷正隆、林立夫、鈴木茂が、ひこうき雲を創造したのである。
このアルバムには名曲が揃っている。中でも僕が好きなのは「雨の街を」である。ベルベットイースターもいい。ひこうき雲はジブリの主題歌にもなった。
翌年に発売されたルージュの伝言は、だれにもまねできない彼女だけの、世界観であった。
育ちが良い上流家庭で育った主人公が演じる浮世離れしたこの世界観には、驚いたのと二感服した。僕にはない世界観であったからだ。
その松任谷由実が50周年として六本木でミュージアムを開いていることを聞きつけた僕は松任谷由実を深く知りたくて、六本木、森ビルに駆け付けた。
この舞台ファッションを着こなしてしまうのだから、着慣れているのだろう。
すごいな。松任谷由実。50周年を出発点にして、次を進もうとしている姿がありありだ。ますます彼女の音楽が好きになっていった。