我が家には二頭のポメラニアン犬がいると書き始めたが、ペットの話をすることが目的ではない。そんなわけで、夫婦で泊まりの旅行に出かけることはあまりできない。旅行をする時は、嫁いでいる娘に声を掛けて、ペットの世話を頼むことになる。朝食後、庭に放して運動をさせて、夕方には取り込んで、夕食を作って、それから懐いて来るペットに十分の愛情を注いで、寝床をきれいに作って水を用意する。
子育ての最中であれば、その作業も時間的に重かろうとの親心から、旅行はそれぞれが交替で行くことにしている。
以上は私の弁解である。このブログを読む親しい友人から、なぜ家族と旅行に行かないのかと口やかましいので、弁解しながら事実を話している。
夫婦で出かけるとなると、お決まりのコースは日帰り温泉で、いつもは我が家から一番近い軽井沢へクルマで出かけ、星野温泉に浸かり、そばを食べて、軽井沢を散策して帰るコースを選ぶことが多い。朝早くでて、ペットの夕食に間に合う夕方の4時頃には帰着するようにしている。
家からは、東名高速や中央道は、都心に向かうので渋滞がひどいが、上越自動車道路、東北自動車道路へはすぐに入れる。那須は高速を降りてからの渋滞がひどくて、足が向かない。軽井沢までは片道170キロメートルなので、つい軽井沢を選んでしまう。軽井沢ならクルマで走れば2時間で星野温泉に到着する。私には軽井沢に住んでいる知人が幾人かいる。だから案外と土地鑑があって、道路も店もよく知っている。そばは夫婦で好みを共有する店も知っている。そんなことも軽井沢を選ぶ決め手になっている。
ご承知の通り軽井沢は、日本で一番の保養地である。海抜1000メートルの高原で夏の保養地としては一級である。観光名所もいくつもあって浅間山から流れてくる白糸の滝も美しい。
星野温泉は、温泉通に言わせると日本三大温泉に入るという。昔の人は酸度の強い草津温泉で治療をして、それから軽井沢の星野温泉で肌を癒すコースとたどっていたのだという。確かに星野温泉の湯はよい。私が知るどこの温泉よりも湯質はいい。
軽井沢は、野生動物の住処である。
下り新幹線線路の右側(北側)は、野生猿が多く、町中に出没する。軽井沢町では本日、どの猿の群れがどこへいるのかをインターネットで知らせている。(軽井沢猿なびねっと)
窓を開けて室内に入り、冷蔵庫を開けて食料をその場で食べる。ついでに排泄をしていく。
住んでいる人には厄介な話で、どの家でもエアーガンを持っている。猿は銃にだけ敏感で、すぐに逃げて行くという。エアガンの弾は、土に還るような材質のもので作れと議論がされているくらい、エアガンは生活の必需品になっている。それでも猿を殺害しないのは、いまは人間が我慢をしているからで、いつか堪忍袋の緒が切れたら町議会は何らかの方法を取らなければならないという。一案としては、猿を眠らせて山の奥地へ連れて行くというが、誰がそんなことをやるのか明らかになってはいない。
熊も、軽井沢銀座のすぐ近くまで降りてくる。イノシシもいる。イノシシは文字通り、クルマに突進してくる。相当数のアライグマも野生化している。そのほかリスもいるし、ムササビもいる。狸も狐もいる。
なにしろ動物が住んでいた所に、人間が住み出したのだから、しかたがない。林野庁が広葉樹を切って杉などの針葉樹を植林する政策を指導した成果として、山奥に入っても木の実も果実もない。だから食物を求めて野生動物は、人の境界線を越えてくる。
軽井沢は湿度が異常なほど高い町である。特に旧軽井沢、南が丘、南原辺りの湿気はひどい。年間250日以上も霧が出る。霧というより雲の中である。それに浅間山からの水脈が地下の高いところに通っている。家は湿気ですぐ傷む。靴はすぐにカビて真っ白になり、晴れた日に洗濯物を外に何時間干してもまったく乾かない。ギターは糊が離れてばらばらになる。冷蔵庫の中もカビだらけになる。畳も真っ白。物入れの中もカビだらけになる。
しかし、その湿気が肌に潤いを持たせ、そして軽井沢特有の杉苔を作る。軽井沢に住む友人は、東京にでかけると肌がぱさぱさに乾燥する。戻ってくると潤いの肌に回復すると口癖にいう。私達は湿気の中で暮らすことが日常だから、湿度が高いのはよいという。住めば都というやつである。
軽井沢の冬は氷の世界になる。明け方には時に-15度以下にも気温は下がる。屋根の雪は氷の塊になり、厚さは30センチにも40センチにも膨らむ。道路の雪もすべて氷になる。
知人は、それは厳しい冬だと語る。しかし、一年中で冬が一番好きという。外は真っ暗で氷点下の世界。そんな中で薪ストーブを焚く。室内は暖かく、火を見て暮らす生活が約6ヶ月続く。本当に寒い朝は外にダイヤモンドダストが舞ってきれいだという。
そんな暮らしをしている知人から、軽井沢も春になったと連絡が入る。明け方は氷点下だが、日中は6度くらいに暖かくなる。あと2ヶ月もすれば、こぶしの花が咲くだろうという。
私は今月末に知人夫妻と軽井沢へ行く約束をしている。まだ冬景色だが、もうどこかに春の匂いがしているのかもしれない。