雪が降ると静かな夜になる。雪が降ると雪は騒音を吸収する。雪が深々と降る夜は人々の心が深々になる。
春が待ち遠しいけれど、静かな夜がある雪の冬が好きだ。
4ヶ月分くらい食料を溜め込んで、薪も一冬は持つくらいに溜め込んで、雪が降る森で、薪ストーブに暖まりながら、誰かと二人で、買い物にも行かず、ただ語り合い、音楽を聴き合い、過ごしていたいと思う。
誰かとは特定の人ではない。いままで出会ったたくさんの人々だ。これから出会うたくさんの人々だ。いま出会っているたくさんの人々のことだ。
雪下ろしはしなくても雪がひとりでに落ちる屋根の構造が良い。雪かきをしなくても歩く場が確保できる道路の構造が良い。半年分は貯蔵できる大きな食料庫が良い。
そうして私は仕事もせずただ、友と語り、一切れのパンと、チーズで赤ワインを飲み、音楽を楽しみ、薪が弾ける音を楽しみたいと思っている。
私は今年二冊目の本を出すための週末を使っている。今日はその日だ。
仕事が大きなうねりのように一定の方向に向かって動き出している。多くの人たちが私が考案した営業理論をクラウドシステムに移し変えている。当分は半年も雪の中で暮らすことはできない。
時の流れに身を任せて、私は雪降る夜を思い浮かべて、仕事をしている。