私の事務所は、古式マンションにある。大手ハウスメーカーの偉い方がもうこのようなマンションはつくれませんと感動する。日光金谷ホテルや、軽井沢万平ホテルのような古式の建造物である。
屋内はすべて煉瓦の壁である。明かり取りの窓はほぼステンドグラスをはめ込んである。
お金に糸目を付けず建てたものです。非常に美意識の高いオーナーさんが作られたのでしょう。損得計算をしたらつくれる建物ではありませんと建築会社の偉い方は説明をしてくれる。
私の部屋はというと、高台の南側に面して、座っているだけで朝日が昇るところを見、窓に立てば夕日が落ちるところを見ることができる。都会にも夕焼けはあって西の空は茜色に染まる。
もとは外人向けにつくられたもので、どの部屋も水回りが個人向けになっていてトイレが三か所、浴室が二か所もある。
震災などの緊急用に一つの浴室は使えるようにした方が良いのではと、社員からアドバイスを受けているがもっかは、集めすぎた油彩画の空き箱や、展示できない絵画の詰まった箱がぎっしり収納されていて緊急時には空き箱を外に運び出さなければならないようになっている。
古式マンションはとても良い。万平ホテルと比べても遜色がない。私は仕事で近代的なガラス張りのビルに良く訪問をしているが、高い美意識をベースとしてつくられた古い建造物は味わいが深い。