軽井沢・南ヶ丘は、往く夏のかほりを漂わせていた。夕暮れになると気温が下がり蝉の声は止まり静けさが目を覚まして、夜の帳を開こうとしていた。短い夏の終わりが始まろうとしていた。うすばしろ蝶は地上から姿を消していた。来年の6月までは・・・地上にその姿はない。
私はクルマの屋根を開いてハンドルを握り、この森を流した。高原の涼風が全身に、まとわりついてきた。風は生きている。風は意思を持って流れている。
私は、ふとむかしのことを思い出していた。風が流れて枯葉がかさかさと音を立てて廻っていた。それを夢中で追いかける一人の人がいた。木立の中は、風が流れ風は廻っていた。もう冬は始まっていた。11月だというのに。木々は葉を落とし、冬の準備を整えていた。
いま、軽井沢・南ヶ丘の森は秋の準備を始めている。季節の変わり目に自然は衣替えをする。いまは盛夏の装いだが、黄昏時の肌寒さは、公転する地球の位置が一コマ移ったことの結果である。
私の森に続く写真の細道が好きだ。南ヶ丘はこのような小道が多い。
買い物があって沢屋に寄った。写真は沢屋の庭にあるブルーベリーの実である。ブルーベリーは乾燥した土地を好む。佐久や小諸には立派なブルーベリー農園がある。軽井沢にもブルーベリーは生るが、皆が植えない理由はすべてはサルの食べ物になってしまうからである。南ヶ丘・南原だけは18号線とバイパスの間に位置し、交通量が多いためにサルが入ってこないことによる。
前の晩、午前3時まで音楽を聴いていた。当日7時に目が覚めた。体はきしんでいたが渋滞情報は軽微で、これなら行こうと一人、軽井沢へクルマを向けた。南ヶ丘は夏の終わりを迎えていた。けれども燃え尽きているような盛夏であった。