室生犀星夫妻の墓 (分骨) 旧軽井沢 矢ヶ崎川畔 室生犀星は生前、愛した軽井沢の地に碑(墓石)を建立していた。
先の日
詩 室生犀星
別れてゆく毎日
毎日にあつた思ひ
誰も知ることのない思ひの渦が背後に音を立てて流れている
思ひはもはや悲鳴をあげない
ただ、流れて往くだけだ
何もないところに
深い溝や 淵のようなところに
あなたがたも 私も
うしろを見たことがない
うしろに音となって
つぶれた毎日のあることを
毎日が死体となって堕ちてゆくのを
見ようとも知ろうともしないのだ
けれども先の日がきらめいて
何が起こり何が私共を右左するか判らない
また先の日のおぼしまに
誰かが思案に暮れ 待ちわびてゐるかも判らぬ
先の日を訪ねて見よう
何処かにあるはずの先の日