営業活動や顧客のことを考えずにiPadで電子カタログを見せればよしとする企業の考え方が、いささか的外れであったといえます。
iPadを活用できない本質は、企業にiPadを活用した新コミュニケーション戦略と技術を設計する考えがなかったことが一つ。二つは顧客と長期的な関係つくりを仕組み化しなかったこと。この二つがiPadを活用できない本質です。
このデバイスを営業活動に組み込む上で議論がなかったことが最大の理由だと思います。それに加えて大企業では縦割り組織になっていて、iPadは営業資料やカタログを制作する部門に委ねられたことも一つの要因です。
このことは初期的な失敗です。しかし面白いのはどの企業も同じわだちを通るようにして失敗をしていくことです。顧客は関心がなければ見ませんし、売り込みのコンテンツは見ません。関係ができている営業パーソンからだと見ますが、関係ができていなければ見ません。
企業は導入時に新コミュニケーション技術など考えもしなかったでしょうし、ましてや顧客施策は度外視していたと見るべきです。
事実、コンテンツを見せるアプリを入れても顧客と紐付いていないために、誰に見せたのか記録にないので、事務所に戻ってから誰にどのコンテンツを見せたのか思い出してノートに記載している営業パーソンが多いです。次に何をやったらよいのかわからずに見せておしまいというケースもたくさんあります。
それはiPadが悪いのではなく、iPadを使ったコミュニケーション戦略を設計することをしていないことと、顧客とどのような関係をつくっていくかの設計図面を持たないことが、iPadを活用できないの最大の理由なのです。
この話は専門的にやっている人なら分かりますが、販売資料やカタログをつくっている部門にはわからないことです。その上、決裁する人は部門がまたがる提案には消極的です。しかも時系列でCRMの推移を知り、新たなメディアのコンテンツの推移を知った上で将来方向性を感知できる専門的な能力を持たなければ理解できないことですから、話を進めることができません。
iPadを使う営業パーソンはメッセージを送っていますがその深い意味を知ることが出来ません。
そこでどの企業でも同じわだちを踏んで活用できない道を進んでしまいます。